【星幽塔】第一階層　シェイプ・シフター｜リアクション

【星幽塔】第一階層　シェイプ・シフター

　レグルスは、微かな叫び声に眉を寄せた。
　保護色となり、砦の壁に同化していたが、遺跡からやってくるシェイプシフターはいなかった。つまり、この砦の中に何匹か潜んでいるに違いない。
「んッ」
　上から降って来て着地した人物が一人。
「お前は」
　クロスボウを持った桜が立っていた。
　レグルスは彼女と対峙する。
「どうした？　逃がしたか？」
「ええ、外へ逃げて来なかった？」
「いや、ここは誰も通ってないな」
「そう。逃がしたかしら」
　レグルスはイフラーンを抜いて、魔火の光を宿らせる。
「いいや、俺の目の前に、いるなっ」
　地面を蹴って、イフラーンを突き出す。
「でやッ」
「！」
　桜がクロスボウを構えるが、不意をついた分、彼女の武器をぶった切るのが早かった。
「あ……」
　桜がよろっとして一歩後退した。
「な、何を？　もしかして、あなたがシェイプシフター？」
　そう問うて来た彼女の首に、クロスボウの矢が突き刺さった。
「ぐあ！？」
　レグルスが上を見ると、窓から、本物の桜がクロスボウを構えていた。どうやら、あの位置から援護射撃をしてくれたらしい。
「その姿でも容赦はしないッ」
　レグルスは柄に力を込めて、踏み出し、右足を軸に回転切りを繰り出す。慌てた様子の桜、もといシェイプシフターの首がすっぱりと切れて飛んだのだった。しかし、彼女の姿は溶けて一瞬で水になり、
「宣戦布告、というわけか」
　レグルスその人に変化したのだった。同じように、魔火の光が偽物のイフラーンに宿る。
「付け焼刃の剣には負けないッ」
　偽レグルスは目を細め、
「自分の剣の錆びになれっ」
　変身対象に知能があり言語を介するなら、シェイプシフターもそれを操れるらしい。
間合いに踏み込んできたところで、レグルスがイフラーンをくるりと回して、下から上へ一閃。なんなく、弾き飛ばした。
「俺をなめるなっ」
　レグルスはイフラーンを構え、炎をまとわせた。
「はあああああっ」
　戸惑っているシェイプスターの肩にイフラーンを振り下ろした。手ごたえはなく、崩れ落ちた水溜まり、レグルスは素早く足元へ剣を突きつける。
　断末魔の悲鳴が辺りに響き、シェイプシフターは消滅したのだった。

「ありがとうございました」
　一斉に頭を下げる守衛達。歩、桜、タルト、レグルスは顔を見合わせ、
「皆無事でよかったな」
　歩がそう言った。
「遺跡に逃げ込まれなくてよかったわ」
「うん。それに四人いたから連携できた感じあるね」
「ああ、皆で協力した甲斐があったな」
　一気に三匹も退治できたのだ。守衛達にとっては救世主だろう。
「お気をつけて帰って下さいね」
「ええ」
　桜は頷いて、
（そろそろ夢から覚めそう）
　タルトはBL本を配った一部の守衛達を見て、
「最後まで、読んでみてね！」
　彼らはすっと視線をそらすのだった。

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