【星幽塔】第一階層　シェイプ・シフター｜リアクション

【星幽塔】第一階層　シェイプ・シフター

部屋に入ると、やや固い表情の彼らはタルトへ注目した。
「では、この中にいるシェイプシフターを炙り出します」
　深刻な表情でいって、
「では、その前に資料を配りますね」
　彼らはキョトンとする。
「し、資料？」
「はい、」
「なんですか、これ、は！？」
　受けとった彼らが目を見開く。
「……」
　暗い顔をしてそれを見つめる。配ったのはBL本であり、眼鏡男子と金髪ヤンキーが額を合わせ、熱を計りっこしている渾身の一枚絵だ。
　しんとなる室内。
　タルトは内心でにやにやしていた。
（あ、ちょっと顔が赤い。ふふふふ）
　一人の守衛がぎこちない動きで、
「あ、あの、これは一体」
「次のページをめくってみれば、分かりますよ！」
五人は恐る恐るページをめくる。
「うわあっ」
　BL本を床に落としたのは十代と思われる若い守衛だ。
　耐性がなければ驚くだろう。なんと言っても渾身のキラキラキスシーンだから。
「うーん、おかしいなー。この中にはいないのかなぁ？」
　この反応を見れただけで充分なのだが。
「ま、真面目に探してください。我々は本当に困っていて」
「わかってますって」
　そう言って、タルトはポケットから風船を取り出した。
「あんまり音がしないので、耳を塞いでるだけで大丈夫ですよ～」
　素早く出口のドアを開け、風船だけどを部屋へ入れる。すぐに風船へ空気を送り込める機械に繋いで、スイッチをオン。
「ちょ、ちょっと！」
「うあああっ」
「膨らんでくっ」
　そして数十秒後。

　ぱあああんっ。

　物凄い空気の弾ける音。タルトが覗き込むと、部屋の隅で耳を塞いでいる四人と、床に水溜まりが出来ていた。ぴくぴくと痙攣しているように見える。
「ビンゴッ」
　タルトは廊下にあった空タルを持ち込んで、スライムのようなそれを中へと流し込んでしっかりと蓋をした。
「よし、完了！」
　と、外から聞こえて来たのは桜の声だった。

「逃がさない！」

　階段を駆け下りる音。どうやら、彼女もシェイプシフターを暴いたようだ。
「それじゃ、守衛さん達、これよろしくね。ご協力ありがとうございました！」
　タルトは外へと飛び出した。

　桜が靴だけを置いて行ったことに守衛達は不思議そうにしている。しばらく待機と言われ、最初は緊張していたようだが、十分も過ぎると談笑を始めた。どうやら、リラックスしてきたようだ。
（そろそろか）
　彼らの表情が緩んだところで、
「！」
　歩は靴の姿から人間の姿へと変化。
「え！？」
「さっきの退治屋さん！？」
　守衛達がざわつく中、煙を上げ始めた守衛が一人。
　歩は目を細めた。躊躇いはない。床を蹴って体を捻る。
「逃がさないッ」
　目を見開く、シェイプシシフター。
「がふッ」
　歩の回し蹴りが決まり、ドアをぶち抜いて、廊下へ吹っ飛んだ。逃げ出すそれを追うことにした。
「後は任せてくれ」
　残った彼らに言って、歩は駆け出した。
「言っただろ、逃がさないって、なっ」
　階段を駆け下りて行く、シェイプシフター。歩は手すりに飛び乗って跳躍し、壁を蹴って、シェイプシフターの頭上へ。
「でやああああっ」
　落下する。重力に任せて、脳天をぶち抜くのだった。

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