【星幽塔】第一階層　シェイプ・シフター｜リアクション

【星幽塔】第一階層　シェイプ・シフター

レグルスと分かれた三人は顔を見合わせる。
「作戦だけど、今砦にいる守衛さんとかスタッフさんを集めてもらって、そこから炙り出すのはどうだ？」
「十何人だっけ？　それなら集まってもらえるかもね」
　タルトが納得したように頷く。
「その後は？」
　桜が聞く。
「集めたところで、さっきみたいに揺さぶりをかけるんだ」
「さっき桜ちゃんがやってたみたいに？」
「もっと強く動揺させることが出来ればいいんだけど。漫さんと響先輩は良い方法ありますか？」
「刺激的なのは用意してきてあるよ！」
「俺も、自分の特性で、靴の姿になれるから、それを利用できると思う」
「靴……」
　さすが夢だと、桜は心の中で思う。
　さっそく、見張り以外の守衛達を集め、五人づつ広めの部屋へ入ってもらった。
　脅かし役というか、暴く役はタルトと歩が担当する。
「じゃ、僕、行ってくるね」
　タルトは手を振って、一方の部屋へ入って行った。
「それじゃ水上さん、よろしく」
　歩はその場で靴へと変化した。
　桜は頷いて、新品同様の靴を手にし、彼らが待機している部屋のドアを開ける。
「砦の中を調べるので、少し待っていて下さいね」
　そう声をかけると、守衛達は不安そうにそれぞれ頷いた。
　桜は靴になった歩をそっと部屋の床に置いて、ドアを閉めた。
「さて」
　残りは見張りの二人だ。この場は歩とタルトに任せて、そちらへ移動することにした。

　砦最上階の見張り場入口。
　桜はそっと中を覗き込んだ。壁に空けられた穴から外を見回している。
（三人？）　
　この砦に在中しているのは合わせて十二人。十人は下の階に集めているのだから、この場に三人いるのは妙だ。
　確実に、いる。
　桜は深呼吸をして、
「皆さん、お疲れ様です」
　声をかけながら見張り場へ入った。
「あぁ、依頼した方ですね。お疲れ様です」
　全員が全員、ぺこりと頭を下げた。
「遺跡の方はどうですか？」
「今の所は変わりませんね。今日はまだやつらの姿は見ていません」
　桜は三人を見回し、
「最後にここへ入って来たのは誰ですか？」
　明らかに動揺する三人。シェイプシフターにとっても本物の見張り兵にとっても冷や汗ものだろう。
「さ、最後に入って来たのは私ですが」
　若い男性の見張り兵が手を上げる。
「右手を見せてもらえますか？」
　もちろん、それになんの意味もないが、シェイプシフター探しの一環だと思うだろう。
　三人は緊張した様子で差し出す。
　それから、考えるフリ。その間数十秒。
「分かりました」
「「「え！？」」」
　桜は三人の顔を見回す。
「シェイプシフターは」
　そう口にした時である。先程の若い見張り兵の体から煙が上がり始めた。次の瞬間、
「！」
　桜は他二人を強めに突き飛ばし、近距離で狩人の光をクロスボウへと変えた。それを構える。
　シェイプシフターの体が煙に巻かれてゆく。
　ドロドロの体に戻る前にと、桜が矢を放つ。すると、シェイプシフターは見張り用の穴からするりと外へ。
「逃がさないわ」
　外にはレグルスがいる。桜は見張り場を出て、階段を下り始めた。

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