星幽塔・第一階層。
辺境にて魔物の襲来を監視する小砦に勤める守衛の、ある証言から物語は始まった。
「ん……?」
「どうした。何かいたか?」
当直の二名の守衛うちひとりが、藪の中に何か動く影を見たという。
小砦は川に面しており、流れを一部砦の敷地内へ引き込んで、用水路として活用している。
川の上流には、古代のダムの跡地であるちょっとした遺跡があり、水量は豊富だ。
「なんだそりゃ。粘液……?」
「でかいナメクジが這ったみたいな……気味が悪いな」
そんな川のほとりへ、奇妙な跡が残されていた。何か大きなものが這い進んだおかげで、藪の深い草が倒され、川に併走する一本の道となっている。
その一端は上流へ。そしてもう一端は、砦のほうへと向かい伸びていた。
「……俺、上流を見てくるよ。お前は砦へ戻って報告を」
「おい、大丈夫かよ?」
実は先月からたびたび、砦内の食糧が消えるという事件が起きていた。
無くなる物資は、最初はじゃがいもが一つ、次いでりんごが数個、小麦を詰めた麻袋が二つ……と徐々に大きなものになっていった。
そしてつい一昨日の晩のこと。夜警の任についていた守衛の一人が、こつぜんと姿を消してしまったのだった。
消えたのは、今まさに上流へ向かおうという、この勇気ある守衛の同僚であった。
3日後。
砦を指揮する守衛の長より、サジタリオ城下町の“Barアストラル”へと一通の手紙が届けられた。
彼はもはや疑心暗鬼に囚われており、部下の誰にも手紙を託すことなく、自ら近隣の村を訪れた行商人を頼ったという。
「ほ~う。敵は
『シェイプシフター』ね」
歴戦の冒険者、
レグルス・シェルタンは酒場のマスターから手渡された手紙へ目を寄せると、数々の冒険譚によって蓄積された知識を記憶の中から取り出す。
「ヤツは本来形を持たんが、見たものに姿を変える能力を持っている」
「そいつは厄介だな」
キセルから煙を一つ吸いこみ、
グレッグ・グロッグが興味深げに身を乗り出す。
二人の着いた卓の上には、数え切れないほどの空き瓶が転がっている。
「何にでも変身できんのかい。そのシェイプナントカってのは」
「そいつ自身の大きさ、つまり成長度合いによるな。育てば育つほど大きなものに、そして多彩なものに変化できるようになる」
砦で頻発した食料の遺失はやがて、守衛の行方不明へと発展した。失せたそれらは全て、シェイプシフターの腹に消えたと、少なくとも手紙の主は考えているらしい。
グレッグはかつんとキセルの灰をつまみの空き皿に落とし、尋ねる。
「人間にも、か?」
「それよ。そのとおり。守衛長が泡を食ってこの手紙をしたためる前日、目撃したんだと。もっとも信頼していた副官が、ドロドロの粘液へ溶けるように姿を変え、闇の中へ逃げていくのを」
副官の男とは昼間も変わらず仕事をしていた。いつから入れ替わっていたのかは皆目見当がつかないという。
「なるほど。そいつは……厄介だ」
「で、どうする」
その後しばらくして、サジタリオ城下町から小砦へ向け、冒険者の一団が出発した。
誰が味方か、誰が敵なのか。事件はまだ、闇の中だ。
こんにちは、高城ヒトです。よろしくお願いします!
レグルス・シェルタンさん、グレッグ・グロッグさん、ガイドに登場してくださりありがとうございました。
ご参加いただける場合は、ガイドに関わらず自由にアクションをかけてください。
概要
星幽塔第一階層の辺境に、『シェイプシフター』という魔物の存在が確認されました。
本体はドロドロの粘液のような身体ですが、「見たことがあるものに変身する能力」を持ちます。
魔物はこの能力を活かし、辺境の小砦へ侵入し、守衛の目を欺いて食料を調達しているようです。
食事をするたびに体積を増し、より大きく、多彩な「もの」へと変身できるようになります。
何でも食べますが、中でも強力なほしびとは特別なごちそうである様子。
現在は棲み処であるらしい遺跡と、砦を行き来している程度ですが、
より強く大きく成長すれば、いずれもっとたくさんのほしびとがいる村や街を標的とするでしょう。
その前に、シェイプシフターを仕留めなければなりません。
砦にいる人員の誰かが魔物なのか、あるいは違うのか。
今まで隣に立っていた仲間は、果たして本物でしょうか?
疑いが疑いを呼ぶ中で、魔物を見つけることはできるのでしょうか?
皆さんは、Barアストラルで依頼を受けた冒険者だったり、
知らないうちに現場へ立っていて巻き込まれた一般人だったりします。
ほしびとさんはもちろん、ひとやもれいび、あやかしの方も、
どなたでもお気軽にご参加ください!
アクション
◆小砦にて
砦には数十名の守衛と、十余名のその他スタッフが常駐しています。
彼らの中から魔物を特定するためには、いくつかの方法があります。
・痛みを与える。
・精神的に不安、不快な状況に追い込む。
・驚かせる。
もちろん彼らは友好的な人々ですので、あまり手荒な真似はできません。
何らかの手段を考える必要があるでしょう。
また、魔物はPCさんにも変身する場合があります。
仲間といえど、疑ってかかることも必要かもしれません。
◆遺跡にて
砦で魔物を見つけ出し、その場で上手く仕留められれば良し。
しかし魔物は素早い動きで、棲み処である川の上流の遺跡へと逃走を図るでしょう。
遺跡は古代のダムの跡地で、この地域一帯の治水のために役立っている重要な場所です。
何層かの階層で出来ていて、最下層の貯水槽の底には、
巨大なドラゴンの亡骸が眠っているのだとか?
追い詰められた魔物はこれまでに見た「もの」へと姿を変え、皆さんへ襲いかかってくるでしょう。
それはあなたの仲間の姿であるかもしれませんし、自身より強力な魔物の姿であるかもしれません。
遺跡は魔物にとって勝手知ったる場所であり、奇襲もありえます。
万全の体制を整え、バトルへ臨んでください。
◆『シェイプシフター』について
魔物の変身能力には、いくつかの特徴と制約があるようです。
・変身した対象の(装備を含む)容姿、能力、技能などを完全にコピーする。
・これまでに肉眼で見たことのある生物、物体に変身可能。
ただし、その時点での魔物の体積で再現可能なものに限られる。
・魔物の体積は、食事をするごとに肥大化する。
攻撃を受けると、体積は減少する。
・変身していられる時間は、5分程度。
・一度変身した対象には、24時間程度経過しなければ、再度変身できない。
・本来は知能を持たないが、変身した対象が知性ある生物であれば、人語を解することも可能。
ただし、知能も記憶力も、変身している間のみ保たれる。
NPCについて
以下二名のNPCが同行可能です。
◆ルーク・ポーラスター
◆フォルカ・ヴィクスン
星の力
星幽塔にいると、星の力 と呼ばれる光が宿ります。
★ 基本的な説明は、こちらの 星の力とは をご確認ください。
星の力やその形状は、変化したりしなかったりいろいろなケースがあるようですが、
このシナリオの中では変化しませんので、このシナリオではひとつだけ選んでください。
ひとともれいびにはひとつだけですが、
ほしびとには、第二の星の力(虹)もあります。
★ 虹についての説明は、こちらの 第二の星の力 をご確認ください。
アクションでは、どの星の光をまとい、その光がどのような形になったかを
キャラクターの行動欄の冒頭に【○○の光/宿っている場所や武器の形状】のように書いてください。
衣装などにこだわりがあれば、それもあわせてご記入ください。
衣装とアイテムの持ち込みについて
塔に召喚されると、衣装もファンタジー風に変わります(まれに変わってないこともあります)
もちものは、そのPCが持っていて自然なものであれば、ある程度持ちこめます。
※【星幽塔】シナリオのアクション投稿時、作物・装備品アイテムを所持し、
【アイテム名】、【URL】を記載することで、
シナリオの中で作物(及びその加工品、料理など)・装備品を使用することができます。
※URLをお忘れなく!!!
※オーダーメイド装備品について
鍛冶工房のトピックを経る(またはシナリオなどで得る)場合のみ
アクション冒頭で指定した星の力とは別に、装備品固有の《特殊効果》が認められます。
アイテム説明欄に、トピックでの完成時の書き込みURL・シナリオ入手時のURLを記載してください。
例:http://rakkami.com/topic/read/2577/2116
以上になります。
それでは、皆さんのご参加をお待ちしています!