もちもち思い出、ねこじま和菓子ウィーク！｜リアクション

もちもち思い出、ねこじま和菓子ウィーク！

〇スタンプラリー
　
　見た目だけなら鎌倉の名家の令嬢然とした清楚な美少女の雰囲気を漂わせている、寝子高二年の楡宮遠海。
　初夏の装いにふさわしいワンピースなど着て、日傘をさして歩いていればなおさらのこと。
　しかし、今日はねこじま和菓子ウィーク。
「なんて素晴らしいイベントなのかしら」
　規格外の食欲の持ち主である遠海にとって、それだけでも心が躍りまくりなのに、そこへきてスタンプラリーである。
（もうこれは「心置きなくお菓子を食べまくれ」という神の思し召しなのに間違いないわね）

　そんなわけで遠海は地図を手に、さっそくあちこちの和菓子屋、和菓子コーナーのあるスーパーや洋菓子屋、喫茶店などを縦横無尽にハシゴしようとした。
　……しかし、悲しいかな、彼女は規格外の方向音痴でもあった。
「えーと、こっちじゃなかったのかしら？」
　きょろきょろと周囲を見回す遠海。
　店を出たらすぐに容赦なく迷う。
　それでも和菓子への執念は、それくらいで折れるようなものではなかった。
「すみません、ここの店へ行きたいんですけど……」
　声をかけられた佐藤英二は、遠海が持つ地図を見て、すぐに自分と同じスタンプラリーの参加者だとわかった。
「ああ、ここなら僕も行こうと思ってたんだ。一緒に行こうか」
「ありがとうございます」

　英二の案内で、無事に次の和菓子屋に着くことができた。
「みたらし団子をください」
　注文を終えた英二が場所を譲る。　
「今あるだけの種類の和菓子を全部ください」
　口を開いた遠海に、次の瞬間店員の笑顔は凍り付いた。
　英二は、（こないだも似たようなことを聞いたような？）とデジャヴを感じるのだった。

　みたらし団子、煎餅、たい焼き、豆大福、わらび餅、おはぎ、どら焼き、水ようかん、栗ようかん、いちご大福、寒天寄せ、抹茶のゼリー……。
　山のように並んだ和菓子を、幸せそうに遠海は食べる。
　食い散らかすのではなく、心底美味しそうに、しっかりと味わいながら食べる。
「どれもとても美味しくて、幸せ……」

　呆然とその様子を眺めながら英二は思う。
（僕じゃ、とてもお腹と財布がもたない……）
　早々に店を後にする英二だった。

　遠海がその後あちこちで迷子になりつつも全クリアし、「ねこじま羊羹」をゲットしたのは言うまでもない。