夢の中のニャオンピック！｜リアクション

夢の中のニャオンピック！

　◆第三章「すやりすやりのマラソン」

「他のみんなより猫になることに慣れてるんだ。もしかしたら、金メダルいけるかも～！」

　夢の中で小さくもさもさな黒猫になった春山小枝は、何に参加しようかな？　と競技種目を眺めていた。
　色んな人達がいろんな競技に参加する中で、今度はにゃんマラソンの参加人数が少なくなったという声が上がってきた。
　どんな競技なのかと詳しく聞いてみれば、普通のマラソンと変わりないらしい。ならば慣れた身体でやりやすい競技に参加すれば金メダルも夢じゃないだろう。
　小枝はにゃんマラソンへの競技参加を申し出て、迷子防止用のタグを貰っていざ準備。

「ふふん、ダッシュもジャンプも、猫の体を乗りこなした私には楽勝なのだー」

　どやぁ……と辺りの猫達にアピールする小枝。周辺の猫達も負けないぞ！　と鳴いてはアピールを続ける。
　あまり鳴いては体力を消耗すると判断した小枝は最初のアピール以外では鳴かないようにしておいた。
　１匹、また１匹と後ろに参加猫達が集まり、ある程度の数が集まったところでスタート。

「にゃ～ん。猫後輩には負けないもんね！」

　てってこてってこ、小枝は係員の指示に従ってにゃんマラソンの道を辿る。
　時には早く、時にはゆっくり、自身の体力と相談しながら走っていた。

　そんな小枝の隣を走っているのは――喫茶店『猫の宮』の店主、猫乃宮ヤマト。小枝と同じペースで、同じ体力配分で走っていた。
　時々小枝を追い越したり、逆に小枝に追い抜かれたりとゆるやかなデッドヒートがヤマトと小枝の間で繰り広げられている。なお、言葉をかわさずに無言で行うため、周囲の別の参加者がビビって後ろに下がってしまった。

　そうして順調そうに見えていた小枝のペースなのだが、だんだん辺りのお昼寝スポットに惑わされ始めた影響で落ち始めている。
　しかも本人はそのことには全く気づいておらず、むしろお昼寝スポットの穴場じゃないかと喜んでいた。
　そんな中で彼女は、今の季節に最適なスポットを見つけてしまい……。

「……はっ！！　ベンチの下！！」

　ひんやりとした土、丁度よい影。猫にとっての最高のスポットがそこにあった。
　小枝は今やトップを独走状態のため、ちょっと休んでも許されるよね……とベンチの下で休み始めた。

　そこから、彼女はふわふわとまた夢を見る。
　空を飛んで、自由に寝子島の空を飛び回る雀になった夢。丁度、すやすやとベンチの下で眠る猫が見える光景が浮かんでいた。

（もしかして私、入れ替わっちゃってる～！？　猫さん、起きて起きて～！）

　ぺちぺちと雀が黒猫――小枝を起こすことで雀の夢は途絶え、再び小枝は走り始める。

　しかし彼女はこの後思い知るのだ。
　寝子島という猫の島にあるたくさんのお昼寝ベストスポットという罠を。

　その罠にハマりにハマって眠って起きてを繰り返した小枝は、後ろから数えたほうが早い順位だったという……。

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