夢の中のニャオンピック！｜リアクション

夢の中のニャオンピック！

　◆第一章「これは夢のにゃんころりん」

　水槻清恋はゆっくりと目を覚ます。目覚めた時には気持ちのいい朝を迎え、いつものように出勤する……はずだったのだが、今日はなんだかおかしい。
　なんと、自分の身体が猫になってしまっているのだ！

「……なんで？？」

　清恋は戸惑った。猫が嫌いなのにどうして猫になっているんだ！　と。
　サバトラ柄の猫――清恋はぐるぐると円を描くように歩き回る。

　しかしニャオンピックの精の声が聞こえてくると、事情についてなんとなく納得……はするものの、苦手なものに変身し続けるというのはだいぶ心情的にもしんどい。
　夢だから競技が終わって寝たらきっと終わっている。そう思うことにした。

　ニャオンピックにはいくつかの競技種目があるが、清恋はなるべく自分が得意で経験のある『走りにゃんころりん』に参加することに。
　元陸上部で１００メートル走のインターハイに出場した経験があるため、長距離よりは短距離で、これならきっと行けるだろうと思ってのことだ。

　軽く場内の様子を確認してから、走り幅跳びの準備をする。猫になった時に多少歩いたりはしているものの、走るのはまだまだやってないため、軽く走ってみた。

「んん……なんか勝手が違う……でも四つ足で走るしか無いんだよねぇ……」

　はぁ、と大きくため息をついた清恋。
　苦手な猫になった上に走りづらいとは、なんともこの夢は面倒なものだという気持ちを込めて、大きく大きくため息をつく。

　スタートラインについて、集中。呼吸を整え、自分の精神をギリギリまで研ぎ澄ませ……走る。
　だんだん幅跳びのジャンプラインに近づくにつれて、清恋は１番自分の集中力が高まった《ゾーン》へと入ったことに気づく。

（なんだ、勝手が違うかと思ったけど……結構普通に動けるね）

　大きく息を吸って、ジャンプラインで地面を蹴って高く跳んで……着地点でしっかりと地面を踏みしめるものの、ちょっとバランスが崩れてしまって、ころりんと転がってしまった。
　猫だからか痛みなどは全く無い。すごい。

　清恋の走りにゃんころりん結果は……『５２ｍ』！
　猫になっているからか、人間の時よりもめちゃくちゃ跳べるようになっているようだ。
　電光掲示板にも、彼女の結果はしっかりと残されている。そんな記録に対して清恋は……少々震えていた。

　そんな中、走りにゃんころりんに参加する別の猫――喫茶店『猫の宮』の看板猫のナナが、しゅぱっ！　と華麗なるジャンプを見せてくれた。
　彼女のその記録は清恋に近い『５０ｍ』。記録を超えることはなかったために、ナナはしょんぼりとした様子で選手席へと戻ってゆく。

「……なんか、余計に猫が怖くなっちゃった……」

　夢の中とは言え、こんな身体能力を持っている生き物がいるんだと、清恋の猫嫌いが加速したそうだ……。

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