夢の中のニャオンピック！｜リアクション

夢の中のニャオンピック！

　◆第二章「自分が矢になるにゃーちぇりー」

　篠原翠響は夢を見た。
　光の玉――ニャオンピックの精というなんか胡散臭いのが、必死になって懇願してくる夢を。
　あまりにも必死なものだから、翠響は付き合うことにする。

「んー……いろんな種目があるのね……」

　参加前に種目を選べと言われたが、いくつもある種目が翠響を悩ませていた。
　走りにゃんころりん、飛びにゃんぴょこ、ねこねこぱんち、にゃんマラソンと色々な種目があるが、その中の１つにゃーちぇりーに人手が足りない！　という声が聞こえてきた。
　誰かまだ種目を選んでない猫はいないのか！　という係の猫が翠響を見つけると、ならばにゃーちぇりーを頼みたいと懇願してくるものだから、翠響はにゃーちぇりーへ参加することに。

　普通のアーチェリーは弓を引き絞り、矢を当てるという動作があるのだが……にゃーちぇりーはなんと、飛ばされる矢が自分自身だというのだからよくわからない。
　的は中身がスライムなクッションとなっており、真っすぐ飛んで直撃しても痛くはない。痛くはないのだが……。

「……さすがに、それはー……」

　翠響は躊躇した。痛くないと言っても自分自身が矢というのは結構、ビジュアル的にも体力的にも、あと絵面的にもやばい。
　じゃあ普通に猫でも使える弓矢を開発すればよかったんじゃないの？　という翠響の疑問に対して、そういう費用と開発者がいなくて、とニャオンピックの精が答えた。結構リアルすぎる事情があったようだ。

「夢……だよね、これ？」

　ぺちんと自分のほっぺを叩いてみても、残念なことに今だけは真実なのである。
　しかしそういう事情があるのなら仕方ないと翠響は準備し始めた。

　にゃーちぇりーは計５回、自分が飛ばされることになる。どんな仕組みで動いているのかはよくわからないが、とりあえず後ろに下がって足を離せば飛ぶ仕組みのようだ。
　そんな仕組みをしっかり理解した上で参加しているのは――俳優・霧水砕牙のマネージャーの１人、木々水サライ。白黒ハチワレ猫の彼は、勢いよく後ろに下がってミサイルのごとく的へ突撃していった。

　サライの点数は……少しズレが出てしまったため、５点、８点、７点、８点、７点の３５点。この時点では最高得点なのだが、彼にとってはあまり良いとは言い難い点数のようで。

「なるほど、ああやって行けば良いんだね」

　サライの動きを見て勉強した翠響は自分の身体を弓矢の弦に引っ掛け、ぐっと後ろに下がって位置を調整し、勢いよく的へと当たる。
　翠響の点数は……ほぼ真ん中。９点、８点、１０点、９点、９点の４６点が翠響の点数となった。

　これは良いほうなのかな？　と翠響が考えていると、現在にゃーちぇりーのトップを行っているそうで、電光掲示板にもしっかりとその記録が残されていた。

「おお……これは、抜かれてほしくないなぁ……」

　ちょっぴり嬉しそうに身体を揺らした翠響。にゃーちぇりーの死闘は、ニャオンピックが終わるまでまだまだ続く……。

このページにイラストを設定する