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春のおすそわけ
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一階の央を占拠していた作りかけの家具をどうにか壁際に寄せて片付け、何とか作業台めいたものをしつらえられたのは、初夏の空が梅雨の雲に覆われてしばらく過ぎた頃。
窓や壁には雨粒の跳ねる心地よい音、作業台の上には海に棲む不思議な友達が来るたびに置いて行くさまざまな色合いのシーグラス。
朝の海の色、夕方の海の色、夜の海の色。ミルク色にレモンジュース色、クリームソーダ色。雨音をお供にシーグラスの色合いを確かめていた手が、ふと止まった。
静かに降る雨滴の音に混ざって、玄関の扉を小さなナニカがカリカリと引っ掻く小さな小さな音がしている。
木製の椅子から立ち上がり、三和土を抜けて戸を開けてみれば、梅雨空を背景にちょこんと座る黒い猫。
丸い瞳をますます丸くしてにゃあと挨拶をするご近所さんちの黒猫に、千早は眼鏡越しの瞳を瞬かせた。
「……散歩?」
千早の問いに答えもせず、黒猫の珠は花壇で旺盛な繁殖力の片鱗を見せるキャットニップへと飛び掛かった。しとしとと降る雨にも構わず、花壇の中を跳ね回ったかと思えば、ストロベリーポットの横で立ち止まってぷぷぷと身震いをする。
庇から零れて落ちた雨粒が、苺の葉の上でぴちょんと弾んだ。跳ねた雨粒が狙いすましたように黒い三角耳の先を濡らす。びっくり顔をする珠に、千早はちょっと笑った。
手を伸ばせば頭を擦りつけてくる人懐っこい猫を右手で抱え上げる。
足の先から耳や尻尾まで濡れた猫を抱いて二階へ上がる。
(ドライヤーは嫌がるかな)
そう判断して、大人しく抱かれたままの珠を胡坐の上に乗せ、コインランドリーで乾かして来たばかりのふわふわタオルでもふもふと拭いてやる。
タオルを動かすたびにじゃれついて来るのは好きにさせ、遊び疲れて膝の上で大人しくなったところをタオルで包み込んで丁寧に拭き上げる。
(大体乾いた、かな)
気持ち良さそうに瞳を細める珠を抱き上げ、つやつやの毛並みに沿って撫でてやれば、珠は喉を鳴らして頭をぐいぐいと腹に押し付けてきた。かと思えば、思い出したように膝からひょいと降りる。帰る、とばかり戸口に向かう珠のあとを千早は追った。
「送るよ」
このまま帰せば、猫はまた雨に濡れてしまう。
階段を身軽に降りて三和土に座る珠を片手に抱き上げ、もう片手に傘を持って外に出る。
そう遠くもない雨の道を、傘を差して歩く。片手に抱いた猫が、梅雨寒の空気に温かかった。傘を叩いては滑り落ちて行く雨の音を耳に、雨に洗われて滲む空気の色を目にして行くうち、ふと。
路地に零れるように咲く鮮やかな青が飛び込んで来た。雨に滲む景色に浮かび上がる、色とりどりの紫陽花。濃い緑の葉の上、溢れるように広がるさまざまの色。
(赤、濃青、水色、薄緑)
春先には緑ばかりだった路地の一角、雨に笑う幼子のように、艶やかな乙女のように、紫陽花が色づいている。
(濃紫、薄紫、白、薄紅、ピンク)
そこかしこに紫陽花の植えられた路地を辿る。
こんもりと丸く整えられたもの、大人の背よりも高く伸びた力強い茎に鮮やかな花をみっしりと開かせる手まり咲きのもの、花冠のような額咲きのもの。どの一輪もひとつとして同じ色を持たず、雨に濡れてますます華やぐ花々を目で追っているうちに、気づけば珠の家はすぐそこで、
──静かに降る雨の中、傘を手に佇むふたりの姿を、見つけた。
色づく紫陽花を前に佇んで話をしているらしい夕と日暮の姿に、千早は足を止める。腕の中でうたた寝を始めている珠の背をそっと撫で、こちらには気づいていないふたりをなんとなく見遣る。
大人びた雰囲気の少女と、一回りは年上だろう男。
叔父と姪かと、最初のうちは思っていた。けれどきっと、
(違う)
日暮にそっと声を掛けるとき、
縁側でのんびり昼寝をしている日暮を見つめるとき、
──彼女は、自分によく見せる『孫に色々お土産を持たせたい祖母』の顔とは全く違う顔をする。
紫陽花を眺めたまま、日暮がなにごとか口にする。
夕が臈たけた白い顔貌をもたげる。日暮の横顔を見つめ、ふと目を細める。その瞳が何とも言えない色を浮かべるのを、千早は今日もまた見た。見てしまった。
彼女の瞳の宿る熱量に当てられ、頬に熱が昇る。
夕が日暮を見つめるそのとき、彼女はいつも何かを見出したような喜びを瞳に輝かせる。己の内に思い出を重ねるようにそっと睫毛を伏せる。そうして、想いを新しくつくるように、また日暮を見つめる。
(発見して、重ねて、新たにつくる)
たとえばそんな、代えがたい愛しさのようなもの。
それを彼女のまなざしに感じて、千早は優しい雨の中、静かに立ち尽くす。
あのまなざしを、あの想いを、どんなかたちに造れば良いのだろう。どんな色に表せば良いのだろう。
どうすれば、あの美しさを表現することができるだろう。
(創りたい)
そう、強く思った。
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あとがき
担当マスター:
阿瀬春
ファンレターはマスターページから!
お待たせいたしました。
千早さんの最近のご近所つきあいな一幕、お届けにあがりました。
何でもない日常のお話ですが、やっぱり神代さんの手にかかると素敵なお話になりますねえ。描かせてくださいましてありがとうございます。
紫陽花の場面も、書いている時期がちょうどリアルと重なっていることもあってとても楽しく描かせて頂けました。
今回も書かせてくださいましてありがとうございました。
少しでもお楽しみ頂けましたら幸いですー!
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
プライベートシナリオS(400)
グループ参加
なし
シナリオジャンル
日常
NPC交流
定員
1人
参加キャラクター数
1人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2021年06月18日
参加申し込みの期限
2021年06月25日 11時00分
アクション投稿の期限
2021年06月25日 11時00分
参加キャラクター一覧
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