異界動物保護特区へようこそ｜リアクション

異界動物保護特区へようこそ

●冒険の記憶

　八神修は遠景に続く大地を眺めていた。
　隣には七夜あおいもいる。一緒にここに飛ばされたのだろうか。

「どこだろう、ここ……」
「分からない。けど心配ないさ」

　修はそう言ってあおいを励ます。すると作業着姿の男性がこちらに向かってきた。彼の話によると、ここは数多の世界からたどりついた動物たちの拠り所らしい。自由に見て回っていいとのことで、二人乗りホバーを借りることにした。他にも弁当や飲み物、役立ちそうな道具や餌も受け取った。
　餌はスタッフが抱えている魚ではなく、固形のブロックだった。おそらく人間でいう栄養バーのようなものだろう。

「それでは、お気をつけて」

　そういってスタッフは２人を見送った。後ろにあおいを乗せて、修はアクセルを踏んだ。

　　　＊　　　＊　　　＊

　最初に着いた草原エリアは、穏やかな雰囲気だった。
　少し散策するとたんぽぽの綿毛みたいに丸く、ふわふわした生き物に出会う。その姿をデジカメで撮影する。

（逃げる様子がないな。スタッフもいるし、人間には慣れているのかも）

　シャッターを切る修の横で、あおいは餌を握ったままじっとしている。

「それ、あげてみるか？」
「うん！」

　修と一緒にふわふわの生き物に近づいて、手のひらに乗せた餌を近づける。すると、その羽を動かしながら近づいてきて小さな口を開けた。餌を少しずつ齧る様子を２人で微笑ましく眺める。そうして他の動物たちとも触れ合って過ごした。

　次の火山エリアは草原エリアに比べてかなり暑い場所だった。ここの生き物たちはどうやって生活しているのだろうか。

（ん？）

　修はある岩を注視する。見た目は変哲のない岩だが、削れたというより切ったような形だった。

「どうしたの？」
「え、あぁ。あの岩がちょっとね……」

　そう言いながら視線を岩に戻すと、先ほどと違う形になっている。疑問に思った修は、あおいに声を掛けて一緒にその岩に近づく。
　よく見ると、それは生物だった。岩の色だけでなく、形も近づけているようだ。

（擬態してるのかな）

　動きはぱたぱたという玩具のようだ。物音がするたびに動きを止めて、形を変える。四角い箱になったり、平らな板になったり。修は静かに観察する。この生物に危険はないみたいだ。すると、修たちのほうに近づいてきた。

（何か欲しがっているのかな。というか、目はどこ……だ？）

　疑問は尽きない。餌を手に乗せて差し出すと、口を開けて食べ始めた。知らないことの連続に修はふと言った。　

「ほんと、世界は広いね」
「そうだね！」

　あおいは目を輝かせながら周囲を見る。

「あおいが楽しめてるなら俺は嬉しいよ」　

　それを聞いた彼女は照れくさそうに笑った。ここを後にした２人は他のエリアも巡って、冒険のような時間を過ごした。

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