【三寮祭】ばっひゅーんシャッフル☆ナイト｜リアクション

【三寮祭】ばっひゅーんシャッフル☆ナイト

●星ヶ丘寮～シンデレラパーティ・その２

(すごい！　高級ホテルみたい！）

　スカートを翻し一回転。
　３６０度どこを見てもゴージャスな部屋のしつらえに、
（ここが今日泊まる部屋？）
　と小山内海は驚きを禁じ得ない。
　桜花寮に暮らす海は、昨年は自寮でおもてなしする立場だった。
　折角だから今年は他所の寮に行ってみようとやってきた星ヶ丘寮の、広さよ！　豪奢さよ！
（同じ寝子高の寮でも桜花寮の部屋とは全然違うなぁ）
　感嘆の溜息が漏れる。
　海が案内された部屋は、一般的には豪邸といえるような邸宅であった。海側に全面の大きな窓。ホームシアターのように大きなテレビに、メイドたちによって皺ひとつなく整えられた広々としたベット。こういった邸宅がひとりひとりに割り当てられ、それが『自分の部屋』扱いになるという。そう言った『部屋』と『部屋』の間に小道、噴水広場、展望スペース、テニスコート、プールまであるというのだから、想像を絶する世界だ。
（ずっとここに住めって言われた気後れしちゃうけど、今夜一晩だものね。せっかくだから普段出来ないような格好をして、普段出来ないような体験が出来たらいいな）
　部屋に荷物を置いて散歩に出ると、麗しいお姉さま風のメイドさんに声を掛けられた。
　それは貸し衣装のスタッフと会場のスタッフを遊撃中の檜扇唱華であった。
「お客様、夜はシンデレラパーティにご参加ですか？」
（シンデレラパーティ？）
　魅力的な音の響きにこくり頷く。
「でしたら衣装室へご案内いたしましょう」
（衣装室なんてあるんだ！　どんな衣装があるんだろう）
　わくわくしながら足を踏み入れた衣装室は小ホール並みに広い部屋で、煌びやかな中世風のドレスや宮廷服の数々が所狭しと並んでいた。この中から夜のパーティのために好きな衣装を貸し出してくれるのだという。
（ほーほードレスがたくさん！　どれにしようかな）
　これ可愛い、あっちも可愛い、と目移りしていると、唱華がすっとタブレットを差し出してきた。
「衣装カタログです。お客様の服のサイズをこっそり教えていただけましたら、ジャストフィットなドレスと靴を御用意致しますわ。お任せ頂ければそれはもうとびきりのドレスを御用意致しましょ」
　海は頷く。とてもじゃないけれど自分一人じゃ選びきれなそうだ。
　ここは唱華の提案に従うのが吉だろう。
『おねがいします。服のサイズは……』
　スケッチブックに書いて見せると、唱華は承知しましたわ、と微笑んでドレスの海の中に姿を消した。
　しばらくして唱華が抱えてきたのは、映画に出てきたシンデレラ姫のような水色のロングドレスだった。バタフライオフショルダーという胸元から背中にかけてて大きく開いたタイプで、裾のほうは妖精の羽根みたいに軽くて柔らかいシフォンが幾重にも重なって広がっている。
　乙女の夢を具現化したようなドレスに、海は戸惑った。
『こんなドレス、似合うかな』
「もちろんです。髪もアップにしましょう。仕立てて差し上げますよ、今宵限りのシンデレラへ」
　そう言われてはもう断れない。自分でもこのドレスを着てみたいと思ってしまったのだから。
『ドキドキするけど……よろしくおねがいします』
　唱華が何か合図をすると、寮生の花咲夢乃がやってきた。
　１年生の夢乃は三寮祭はじめてで、寮のお祭りにワクワクといった面持ちだ。「寮には素晴らしいスタッフがたくさんいらっしゃるので、私の出る幕ではないかもしれませんが、何かお手伝いできることがあれば」と申し出てくれていた彼女に、唱華は海を預ける。
「こちらの方の着替えを手伝ってくださいますか？」
「はい！　可愛い方、アイドルみたいですわ」
（あ、アイドルって……そこまで言われると恥ずかしいな）
　海から見ると夢乃のほうが余程アイドルみたいだ。
「さ、こちらへ。お手伝いさせていただきます」
　夢乃に促され、海は選んでもらったドレスを手にチェンジングルームへ入ってゆく。

◇

　海と入れ替わるように、恵御納夏夜と恵御納夏朝がチェンジングルームから出てきた。
　夏夜の衣装は、夏朝と対になる藍色のドレスに、ティアラとハイヒール。デジカメを首から下げている。
　夏朝の衣装は、橙色のドレスにティアラとハイヒール。橙色布製猫パペット『ハルくん』も一緒だ。
「ハルくんは……男性用の衣装装飾をつけられるかな？」
　そんな夏朝の希望を聞きつけると、唱華はあっという間にハル君用の衣装を縫いあげてくれた。
「すごい……格好いい。これなら、ハルくんも一緒にパーティに行けるね」
　夏朝は感激した。
　夏朝と夏夜、ふたりは双子ということになっているが、昨年の今ごろふたりはひとつの体をシェアするひとつの存在だった。
「去年の三寮祭は、僕が参加したことになっているけど、実際には夏夜ちゃんなんだよね……あのとき人格は夏夜ちゃんだったから……」
「……そうか、そういえばそうだった。夏朝は実質初参加ということなんだね」
「うん……ちょ、ちょっと緊張する……！」
　手をつなぐ。
　そうすると少し心が落ち着く。
　ふたりで過ごす三寮祭。１年前は願うだけだった奇跡に、喜びを感じずにはいられない。

このページにイラストを設定する

【三寮祭】ばっひゅーんシャッフル☆ナイト

シナリオ

シナリオデータ

シナリオスケジュール

参加キャラクター一覧