【新入生歓迎会】情熱のイッサイガッサイ新歓祭｜リアクション

【新入生歓迎会】情熱のイッサイガッサイ新歓祭

　アシュリー・アンダーソンがステージに登場した。新入生とは思えない堂々とした態度に温かい拍手が送られた。凛々しい美しさに女性の声援が飛び交う。
　パフォーマンスの瓦が持ち込まれると場の雰囲気が徐々に変わってゆく。
　十枚、重ねられた時点で独特な緊張感が生まれた。静けさに包まれた状態でアシュリーは瓦を積み上げていく。
　二十枚を超えた。
「無理だろ……」
「……空手でも、やってるとか？」
「司会はそんなこと、言ってなかったと思うけど……」
　囁く声が集まって不穏な空気が漂い始める。
　合計で二十五枚。一番、上の瓦に薄い手拭いを置いた。
　アシュリーは立った状態で瓦を眺める。
　――なんだ、これは。
　取り敢えず、右の拳を握った。真上から打ち抜く要領で何回か動作を繰り返した。
「……違うな」
　ぽつりと口にして手刀に変えた。やはり動きを試す。振り下ろす動作に合わせて腰を落とす。
　イメージが固まったのか。直立の姿勢で大きく息を吸った。人々の目が注がれ、息を飲む。
　右の手刀をゆっくりと上げる。限界で止まり、一気に振り下ろした。
　鈍い音が響く。アシュリーの動きが止まった。手刀は瓦の中央を見事に捉えていた。が、威力の問題で一枚も割れていなかった。
　カメラで写した八神修は、これは、と苦痛に歪む一枚に思わず目を背けた。
　未だにアシュリーは打ち下ろした姿勢で動かない。
　――ダメだ。痛すぎて動けない。鼻の奥がツンとして涙が出そうだ。
　時間と共に全身が小刻みに震え出す。
　人々は反応に困った。戸惑いが大きく、それとなく周囲に目をやる。
　その時、瀬川天音が叫んだ。
「体を張ったナイスなボケです！」
　鋭い一言に、ああ、と納得したような声と共に盛大な拍手が沸き起こる。
「大丈夫かな？」
　拍手をしながら恵御納夏夜は冷静な目で見ていた。
　恵御納夏朝は頭を下げた状態で左手のハルくんをそろそろと上げる。
「痛そうで見ていられないにゃ～」
「あれが演技ならいいんだけどね」
　犬杜初は苦笑いで言った。
　少し痛みが引いたのか。アシュリーは最初の直立の姿勢に戻った。
「今日はこのくらいで勘弁してやるよ！」
　その捨て台詞は人々を爆笑させた。その中、アシュリーは平然と歩いて舞台袖に消えた。
　途端に右手を押えてしゃがみ込んだ。
　拘束具に身を包んだ雨崎荒太郎こと、ミスターＡは片言の日本語で周囲に氷を要求した。
　未だに痛みで震えているアシュリーには遠い目をして言った。
「ムチャ、シヤガッテ。ダガ、ナイスパフォーマンスダッタ」
　覆面の一部、露出した口が白い歯を見せて健闘を称えた。