牛瀬家、引っ越す？　ガレージセールにおいでよ！｜リアクション

牛瀬家、引っ越す？　ガレージセールにおいでよ！

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「結構賑わっているようだね」
「うん」
　そんな風に話しながら来たのは、ウォルター・Bと稲積柚春。二人はその日、旧市街でお散歩デートをしていた。その際、牛瀬宅でガレージセールをしていると話を聞いたのだ。
「そう言えば、牛瀬先生が寝子高を辞めちゃうとか……そんな噂が学校であったっけ。ワットは何か知ってる？」
「噂は聞いたかも。でも、その前に牛瀬先生が家の立て直しをすることを聞いていたから……」
　柚春の言葉に、ウォルターは苦笑する。
　よく見れば、寝子高生の姿がちらほらと見える。中には先生と一緒に来ている者もいる。
（指輪は……どうしよう？　隠した方がいいかな？　それとも……）
　少し悩んだ柚春だったが、すれ違った綾花と珪の様子を見て首を振る。
（ううん、堂々としていよう）
　自分と彼の関係を知るか否かはさておき、柚春は小さく微笑んで前を向いた。指輪は彼女の意思をくみ取ったかのように、控えめに輝きを見せる。
　その時、彼女の脳裏にいいひらめきが浮かんだ。
「ねぇ、ワット！　何か言われたら引っ越しマスターって紹介してよ」
「え？」
　突然の提案に、ウォルターは目を丸くする。柚春曰く、超転勤族の親に振り回されたせいで、荷造りを筆頭に引っ越しに関することは自信があるらしい。そこで、『牛瀬先生の役に立ちたくて』ウォルターに連れてきて貰ったことに……と考えたようだ。
「そう言うならば……。だけど、それが上手くいくかはわからないけどね」
　柚春の提案に、ウォルターは意味深な笑みで頷いた。

　ガレージセールを見て回っているうちに、巧と会う二人。打ち合わせ通りにウォルターが話せば、巧は感心したように目を僅かに見開く。
「ほぉ～、稲積さんは凄いな。わいは引っ越しなんてあまりやっとらへんからな。アドバイスが貰えたら御の字や」
　助かった、と笑うその顔は普段よりも柔和で。傍らでは奥さんであるいおりも「ありがとう」と嬉しそうだ。
　並べ方には工夫がしてあるのだろう、とくにアドバイスすることはないように感じる。
「こういったのもいいですけど、もし困っていたら寄付出来るところもありますよ」
　柚春はそういうとスマホを操作し、寄付を募っている場所について情報を見せると牛瀬夫妻は興味深そうにそれを見ていた。