牛瀬家、引っ越す？　ガレージセールにおいでよ！｜リアクション

牛瀬家、引っ越す？　ガレージセールにおいでよ！

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「これ……」
　柚春がウォルターとみていたのは、赤ちゃんのおもちゃだった。木で作られた車に、布で作られた絵本に、積み木など。
（かわいい）
　愛らしいと思いながら見つめているうちに、将来的なことをイメージしていた。
「僕らにはまだ必要ないけど……いつかはそんな日が来るのかな」
　ぽつりと呟けば、ウォルターはにこっ、と笑う。柚春も微笑み返していると、「懐かしい～」と楽し気な声が聞こえた。
「その布の絵本、　私の赤ちゃんの頃の写真にあったから覚えてるんだ」
「へぇ～。人気なんかなぁ」
　蒼とまことがそのおもちゃを見て楽し気に話している。蒼はウォルター達に気づき手を振れば、ウォルターは「やぁ」とあいさつを返す。
「ウォルター先生も来ていたんだね！」
「何かいいものは見つかったかい？」
　そんな風に会話する二人を柔らかい笑顔で見つめる柚春。そんな彼女に「こんにちは」と声をかける者がいた。綾花である。その傍らには珪とラッセルがいた。
「結構来てるんだね。何かいいものでもあった？」
「それなりに」
「俺は家具を取り置きしてもらってるんだ」
　綾花が微笑えめば、ラッセルもまた楽し気に頷く。珪は珪で非常食をいくつか買ったらしく、「ワインのおともにしようかと」と缶詰を見せながら語った。
「缶詰ってどこにあったの？」
　蒼が問えば、「それならば……」とまことが場所を教えてくれる。ラッセルもちょっと興味を持ったのか、まことについていく。
　言われた場所へ行ってみると、まだ複数の缶詰がかごの中にあった。それを見た蒼は、少し目を丸くする。
「パンパンに膨れ上がってるかと思ったけど……」
「さすがにそれはないみたいだな」
　ラッセルもまた興味深そうにのぞき込んでいたが、ふと顔を上げると何かにくぎ付けになっていた。不思議に思った蒼が視線を移せば、ペアカップが。彼は想い人に同棲を提案しており、その返事を待っているところだったのだ。
（いいなぁ、こういうの。……やっぱ、こういう物もそろえておくか？）
　と考えいつかは自分も……、と意識してしまう。だが、すぐに首を振った。
「まだお預けだな。こういうのは先行して買っちゃまずいって」
「ん？」
　ふと口から出てしまった呟きに、ウォルターが首をかしげる。ラッセルは苦笑しつつ首を振り、別の物に目を向けた。
「この椅子、使いやすそうだな……」
「そうですね。シンプルだからどんな部屋にも合いそうです」
「こっちにはカプギアのパーツが……。何か使えるのあるかな？」
「どんな改造をするの？　なんかわくわくするよね」
　ラッセル、柚春、綾花、蒼は、わいわいと話を弾ませながらガレージセールの商品を見る。通りがかった巧はそれとなく止まり、ウォルターと珪とともにその光景を楽し気に見つめる。彼がいつの間に居たことに珪はちょっと驚いたものの、ウォルターは軽く片眉を上げて、すぐに普段の穏やかな顔に戻る。
　ふと、巧は二人を見……、わずかに目を細めた。
「……ええか。それぞれ大事な人を悲しませるんやないで」
　その言葉に、珪とウォルターは互いに目を合わせ、「やはり……」というような顔になる。巧はそんな二人に普段より真面目な顔で一度頷くと、普段通りの飄々とした雰囲気を纏ってラッセル達の方へ行く。
　悟ったことを口にせず、珪とウォルターはしばし巧を見る。教師であり、愛妻家である彼の言葉は、妙に重いような気がする２人だった。

　牛瀬家のガレージセールはそこそこいい雰囲気で幕を閉じた。

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