デビデビマシン猛レース！｜リアクション

デビデビマシン猛レース！

●それぞれの乗り物

「やれやれ、放ってはおけないね」

　爆走するバイクを横目に、恵御納夏夜はため息交じりにそう言った。
　ミラの話ではここは『時の特異点』であり、放置すれば寝子島は犯罪に満ちた暗黒の島へと堕ちてしまうという。
　それを避けるためには、あの悪魔を殲滅するしかない。気づけばもう悪魔もバイクも視界から消えていた。

「……とはいえ、奴等を追いかけて殲滅するには車がほしい。耐久性の高い……SUVとか？」

　そう考えた途端、夏夜の目の前に一台の車が現れた。

（まさか本当にSUVが出てくるとは……神魂か？）

　黒猫型のSUVは日本車で４人乗り。しかもスペアタイヤが付いている。耐久性は十分高く、山道なども走破できそうだ。

「これなら対抗できるだろう。免許はまだ取得してないんだけどね」

　とはいえ今は非常事態。夏夜はすぐさま乗り込んでエンジンを掛けた。
　ねこったー情報からバイクの走行ルートを推測し、直接追いかけるのではなく人気のない道で待ち伏せる作戦にした。

　　　　　＊　　　＊　　　＊

　白石龍樹はミラの話を聞いてテンションが上がっていた。

「ゲーセンのミャリオカートがリアルでできるのかよ！　ラッキー☆」

　悪魔たちの乗るバイクをどうにかしないと、寝子島が犯罪のメッカとなり、やがて無法地帯になる。その事情は分かっていても、喜びは抑えきれない。

「俺のマシンは四輪がいいな、安定してるし。あとは……」

　そうして色々と思い浮かべていると、それが形になって龍樹の前に現れた。スポーツカーのようなデザインで、車体が綺麗な曲線で構成されている。
　そしてフロント部分には、龍樹のカプセルギアである『ムテン』の顔が付いている。この世に１台しかない特別製だ。

「おお！　すげえ！」

　龍樹はさっそく乗り込むとミャリオカートの要領でアクセルを踏んだ。
　ゲームと違い、乗っている本体が動いているのはなかなか新鮮だ。ハンドル回しやアクセル・ブレーキなどの基本操作はゲームとほとんど変わらないので慣れるまで時間は掛からなかった。

「さっそく追いかけるぜ！」

　アクセルをギュンと踏むと、車は一気に速度を上げた。龍樹は悪魔たちが行った方向へとハンドルを切る。

　　　　　＊　　　＊　　　＊

　仙藤蒼は学校からの帰り道、ミラから今起こっている事態を耳にする。

「バカップルが爆走するのを阻止しないと……さて、どうしたものか？」

　制服姿のまま、しばし考え込む。相手はバイク。自分は徒歩。
　その状況から最も優先すべきものが見えてくる。

「やはりバカップルを追うには何か足がないとね」

　蒼がそう思ったらいきなり目の前に犬型のバイクが現れた。どうやらこれに乗れということらしい。
　早速乗ってグリップを握る。乗り心地は結構いい。元々ゲーマーな彼女は、様々なタイプのゲームをプレイしている。当然レーシングゲームも嗜んでおり、相当な腕前である。
　それゆえか、初めてにも関わらず、右グリップを手前にひねると綺麗に加速した。

　それぞれが、それぞれの方法で悪魔たちのバイクを目指す。
　そのなかには悪魔的装飾をゴテゴテと施したモンスタートラックに乗りハンドルを握る、島岡雪乃の姿もあった。

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