デビデビマシン猛レース！｜リアクション

デビデビマシン猛レース！

●悪魔たちを止めるために

　悪魔たちは自分たちの領域だと主張するように爆走する。
　その後ろから蒼たちが迫ってきていた。

「ねぇダーリン！　誰か追ってきてるわ！」
「なんだってハニー！」

　悪魔たちも皆の存在に気付いた。蒼たちは距離を詰めようと加速する。

　とはいえ、彼らのバイクは最高速度を時速300km以上は優に超え、走行痕は炎の尾を引いて、うかつに接触できない。
　おまけにマフラーから噴き出す炎も高温で、バイク本体も戦車のような頑強な装甲を持つ。

　ダーリンこと、バーニーは片手で操作しながら炎の魔銃を構える。
　ハニーこと、アーニーも炎の魔鞭で威嚇してくる。

　思わずその威圧感に圧倒されそうになる。
　それに対して、雪乃先生は構わずアクセルを踏み、悪魔たちとの距離を詰める。

（うわっ、あのメガネのお姉さんすげえ！　はええ！　オレも負けないぞ！）

　龍樹も雪乃先生に負けじとアクセルを踏み込む。
　少しずつ悪魔たちに近づき、攻撃できそうなギリギリの範囲に入ると、手元にある武器を投げつけた。

「くらえ！　コショウ爆弾だ！」

　龍樹はバーニー目掛けてそれを投げた。敵の眼前で破裂すると、コショウの粉末と香りが辺りに広がる。

「ぐわあ！　目が！」
「大丈夫ダーリン！？」
「このくらい問題ないさハニー……！」

　バーニーは片手でバイクを操りながら、もう片方の手で目元を払う。

「チャンス！」

　龍樹は一気に近づいてマジックハンドのグーパンチを仕掛ける。
　しかし、これだけで倒せるほど悪魔もそのバイクも脆弱ではない。それにすぐさまアーニーの鞭が襲い掛かり、それを龍樹は急ブレーキでなんとか回避した。

　お互いに体勢を立て直そうとしたところに、夏夜が飛び込んできた。彼女の操るSUVが悪魔たち目掛けて突っ込む。

「なんだこの車はー！？」

　突然の展開に慌てる悪魔たち。
　しかしバーニーは高い運転技術で真横からの衝突を避けた。それでも完全には避けきれず、車はバイクの後方部分にぶつかった。
　バイクは大きく揺れたが、転倒はしなかった。夏夜も強引にハンドルを切って車道に乗った。

　蒼は一連の様子を少し離れたところから見ていた。

（こちらの武器らしいものは……）

　今乗っているバイクを改めて確認する。
　このバイクは口の部分からマシンガンを撃つことはできそうだが、進行方向にしか撃てない。そうなると相手の後ろを取るか、正面または側面に回り込むしかない。

（まぁ、それができたら苦労しないわよね）

　後ろを取るには走行痕を回避しなければならず、さらに相手の運転技術が高いため、蒼の運転でも接近は難しい。
　仮に近づけたとしても、魔銃や魔鞭での攻撃を考えると正面や側面から回り込むのはリスクが大きい。煙幕のように視界を遮る手段がないので、どうしても真っ向勝負になる。
　それに悪魔たちの警戒心もかなり高まっている。

（見た目だけなら頭の悪そうなヒャッハーな感じなのに、さすがに悪魔だけあって狡猾……）
　
　攻撃のタイミングを計っていた蒼をサポートしたのは雪乃先生だった。先生のモンスタートラックが幅寄せして、悪魔バイクの移動範囲を狭める。

（これなら……いける！）

　蒼は走行痕に気を付けつつも射程範囲内に入ると、バイクの口からマシンガンを撃ち込む。これはかなり効果的なダメージを与えているようだ。車体にへこみや傷が目立ってきた。

「まだだ……まだ行けるぜ……！」
「ダーリン！　頑張って！」

　悪魔たちだってやられっぱなしではない。銃や鞭による反撃が龍樹たちに襲い掛かる。
　一進一退の攻防が繰り広げられるなか、夏夜は別の手段を考えていた。

（僕のろっこん……車の重力は増減可能か？）

　夏夜のろっこん『月の満ち欠け、重く軽く』は対象にかかる重力の強さを変化させることができる。それを利用して、車を軽くしてから空へ飛ばし、その後重くしてから悪魔バイクに落とす。
　危険な賭けだが、致し方ない。
　夏夜は悪魔バイクを追いかけるルートから一旦外れて、ねこったーでこの先の走行ルートを調べ始めた。

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