- 0
- 0
- 種族
-
- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
三月イチゴのお茶会
☆姉弟の休暇
志鷹 若菜と志鷹 佑都は、共に医の道を志す双子の姉弟だ。
若菜は小児科医、佑都は救急医として多忙な日々を送っているが、この日は揃って休暇を取っていた。
珍しい苺狩りのことを友人から聞いた佑都が、若菜を誘ったのだ。
（あの日から若菜は笑顔が少なくなった）
若菜は恋人の心身に残された傷を見てから、心が悲しみに染まってしまったように感じていた。
意志が強く愛情深いけれど、繊細で感受性が強い彼女にとって、覚悟していたとはいえ彼に刻まれた全身の傷は、ショックが大きいものだったのだ。
（甘い苺やスイーツで、少しでも笑顔になってくれたら嬉しいな）
そんな自分の心を想い佑都が苺狩りに誘ってくれたことを感じ、若菜は感謝していた。
（ありがとう。佑都。 ……心配かけてごめんね）
「チョコフォンデュコースでいいかな」
「ええ」
二人は苺を摘み、チョコファウンテンへ向かった。
甘い香りに心が躍る。
佑都は、チョコを纏わせた苺を姉の口へ運んだ。
若菜は弟が差し出してくれた苺を嬉しそうにぱくり、と食べる。
「美味しい」
今度は自ら苺を弟の口へ運ぶ若菜。
仲良く苺を食べさせ合う2人は、傍目には恋人同士に見えたろう。
「ドイツに留学した時に、カカオを象った大きなチョコファウンテンを見たんだって。彼が教えてくれたの」
若菜は嬉しそうに語る。
（姉さんのこんな笑顔を見るのは久しぶりだ）
佑都は心から安堵する。
若菜の心は彼との思い出に飛んでいた。
彼とは月に一回会えたら良い方。
（私の身体がすっぽりと収まってしまう、あの優しい腕の中が大好きで、恋しくて）
会えないと寂しいけれど、彼の身体のぬくもりは今もの若菜の中に残っている。
（だから……頑張れる）
「飲み物はどうする？」
佑都に聞かれ我に返る。
「あ、それじゃ……バラの紅茶を」
メニューを見て注文する。
「俺はコーヒーにしよう」
佑都はコーヒーを注文し、共にテラス席へ向かった。
「いい香り……」
紅茶から立ち上るバラの香りを吸い込み、一口飲む。
それから苺の甘みを味わう若菜。
青い空の下ゆっくりと時を過ごしていると、心は自然と穏やかになってゆく。
「こんなお茶会もいいね」
佑都がそう言って、若菜がそうね、と微笑んだ時、急に強い風が吹いた。
「……！」
思わず二人は目を瞑る。
瞼を開くと二人は、木漏れ日が揺れる木陰に立っていた。
「ここは……？ なんだか、懐かしい気が？」
テーブルもビニールハウスも消えていて、不思議に思いながら周りを見ると。
「ここ……子供の頃に家族でよく来ていた公園じゃない？」
若菜の言葉に、佑都も思い出した。
「ああ……そうだ」
優しいそよ風が頬を撫でる。
豊かな木々の緑、柔らかな芝生……それは、互いの心の中にある、大切な原風景だった。
（どうして……？）
不思議に思う間もなく、突如後ろから服を掴まれて、佑都は驚いて振り返った。
若菜もまた、振り返る。
すると若菜の前には男の子、佑都の前にはそれよりも少し幼い女の子が立っていた。
「……どうしたの？」
若菜は男の子の頭を優しく撫でる。
すると男の子は、頬を染めて嬉しそうに笑った。
（この子、どこかで……？）
見覚えのある顔立ちと思ったけれど……思い出せない。
小児科の仕事柄たくさんの子供たちと接するけれど、こんな笑顔を見る機会はほとんどないし。
そういう場での出会いではない気がする、が。
遠くの芝生には男性と女性の姿が見えるが、顔はよく見えなかった。
（この子たちのお父さんとお母さんかな……？）
女の子のほうは、佑都に向かってにっこりと笑み、一輪の花を差し出す。
「ありがとう」
と言って佑都が頭を撫でると、女の子は嬉しそうに佑都にくっついてきた。
それから、男の子と一緒に親らしき人のほうへ元気に駆けていった。
「……え？」
目醒めると、公園の景色は消え失せていた。
二人は元通りにテーブルについている。
傍らに幼い兄妹の姿があった。
自分達のテーブルの下へ向けて手を伸ばしている。
その先を見ると玩具が落ちていた。
遊んでいてテーブルの下に入ってしまったらしい。
「取ってあげるよ」
佑都が拾った玩具を、若菜がハンカチで綺麗に拭いた。
「はい、どうぞ」
兄妹の手へ渡すと、
「ありがとう」
嬉しそうに言った子供たちの顔は、夢の中のものとは違っていた。
元気に自分の席へ元へ戻る小さな背中を見送り、若菜と弟は微笑み合った。
「夢を見ていたわ」
「ああ、俺も」
双子なら、同じ夢を見ることもあるだろうか。
あんなにはっきりしていたはずの夢は、もう細部が曖昧になっていた。
志鷹 若菜と志鷹 佑都は、共に医の道を志す双子の姉弟だ。
若菜は小児科医、佑都は救急医として多忙な日々を送っているが、この日は揃って休暇を取っていた。
珍しい苺狩りのことを友人から聞いた佑都が、若菜を誘ったのだ。
（あの日から若菜は笑顔が少なくなった）
若菜は恋人の心身に残された傷を見てから、心が悲しみに染まってしまったように感じていた。
意志が強く愛情深いけれど、繊細で感受性が強い彼女にとって、覚悟していたとはいえ彼に刻まれた全身の傷は、ショックが大きいものだったのだ。
（甘い苺やスイーツで、少しでも笑顔になってくれたら嬉しいな）
そんな自分の心を想い佑都が苺狩りに誘ってくれたことを感じ、若菜は感謝していた。
（ありがとう。佑都。 ……心配かけてごめんね）
「チョコフォンデュコースでいいかな」
「ええ」
二人は苺を摘み、チョコファウンテンへ向かった。
甘い香りに心が躍る。
佑都は、チョコを纏わせた苺を姉の口へ運んだ。
若菜は弟が差し出してくれた苺を嬉しそうにぱくり、と食べる。
「美味しい」
今度は自ら苺を弟の口へ運ぶ若菜。
仲良く苺を食べさせ合う2人は、傍目には恋人同士に見えたろう。
「ドイツに留学した時に、カカオを象った大きなチョコファウンテンを見たんだって。彼が教えてくれたの」
若菜は嬉しそうに語る。
（姉さんのこんな笑顔を見るのは久しぶりだ）
佑都は心から安堵する。
若菜の心は彼との思い出に飛んでいた。
彼とは月に一回会えたら良い方。
（私の身体がすっぽりと収まってしまう、あの優しい腕の中が大好きで、恋しくて）
会えないと寂しいけれど、彼の身体のぬくもりは今もの若菜の中に残っている。
（だから……頑張れる）
「飲み物はどうする？」
佑都に聞かれ我に返る。
「あ、それじゃ……バラの紅茶を」
メニューを見て注文する。
「俺はコーヒーにしよう」
佑都はコーヒーを注文し、共にテラス席へ向かった。
「いい香り……」
紅茶から立ち上るバラの香りを吸い込み、一口飲む。
それから苺の甘みを味わう若菜。
青い空の下ゆっくりと時を過ごしていると、心は自然と穏やかになってゆく。
「こんなお茶会もいいね」
佑都がそう言って、若菜がそうね、と微笑んだ時、急に強い風が吹いた。
「……！」
思わず二人は目を瞑る。
瞼を開くと二人は、木漏れ日が揺れる木陰に立っていた。
「ここは……？ なんだか、懐かしい気が？」
テーブルもビニールハウスも消えていて、不思議に思いながら周りを見ると。
「ここ……子供の頃に家族でよく来ていた公園じゃない？」
若菜の言葉に、佑都も思い出した。
「ああ……そうだ」
優しいそよ風が頬を撫でる。
豊かな木々の緑、柔らかな芝生……それは、互いの心の中にある、大切な原風景だった。
（どうして……？）
不思議に思う間もなく、突如後ろから服を掴まれて、佑都は驚いて振り返った。
若菜もまた、振り返る。
すると若菜の前には男の子、佑都の前にはそれよりも少し幼い女の子が立っていた。
「……どうしたの？」
若菜は男の子の頭を優しく撫でる。
すると男の子は、頬を染めて嬉しそうに笑った。
（この子、どこかで……？）
見覚えのある顔立ちと思ったけれど……思い出せない。
小児科の仕事柄たくさんの子供たちと接するけれど、こんな笑顔を見る機会はほとんどないし。
そういう場での出会いではない気がする、が。
遠くの芝生には男性と女性の姿が見えるが、顔はよく見えなかった。
（この子たちのお父さんとお母さんかな……？）
女の子のほうは、佑都に向かってにっこりと笑み、一輪の花を差し出す。
「ありがとう」
と言って佑都が頭を撫でると、女の子は嬉しそうに佑都にくっついてきた。
それから、男の子と一緒に親らしき人のほうへ元気に駆けていった。
「……え？」
目醒めると、公園の景色は消え失せていた。
二人は元通りにテーブルについている。
傍らに幼い兄妹の姿があった。
自分達のテーブルの下へ向けて手を伸ばしている。
その先を見ると玩具が落ちていた。
遊んでいてテーブルの下に入ってしまったらしい。
「取ってあげるよ」
佑都が拾った玩具を、若菜がハンカチで綺麗に拭いた。
「はい、どうぞ」
兄妹の手へ渡すと、
「ありがとう」
嬉しそうに言った子供たちの顔は、夢の中のものとは違っていた。
元気に自分の席へ元へ戻る小さな背中を見送り、若菜と弟は微笑み合った。
「夢を見ていたわ」
「ああ、俺も」
双子なら、同じ夢を見ることもあるだろうか。
あんなにはっきりしていたはずの夢は、もう細部が曖昧になっていた。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2021年01月07日
- 参加申し込みの期限
-
- 2021年01月14日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2021年01月14日 11時00分
