桜花寮なんでもバスケット！｜リアクション

桜花寮なんでもバスケット！

☆一人部屋へ

　羽生碧南は、いままではルームメイトと共に二人部屋で暮らしていました。
　その子とは仲が良かったけれど、今年──高校三年からはひとり部屋にすることにしました。
　別に不仲になったわけじゃないのですが。
（でもせっかく空いているなら、一人部屋を希望しようかな）
　なんとなく、そんな気になったわけで。
（一人部屋は二人で使っている部屋よりは小さいかな）
　と思っていたけれど、実際に行ってみると二人部屋と変わらない広さでした。
「結構広いんだ、意外とのびのびと過ごせそう」
　部屋割りが決まったので、すぐにその部屋に荷物を運びこむことにしました。
　おととしここへ来たときは実家が火事になって間もなくで、余分な荷物はなかったのですが。
　入寮してからバイトしたりして買った乙女ゲームもずいぶん溜まっていて、思ったより荷物が多くて何度も部屋を行ったり来たりしました。
　クローゼットに衣服類を入れ、そのほか様々な荷物を配置したり。
（後回しに……いや、今やらないともう片付けたくないよね）
　さぼりたくなる気持ちに活を入れて、碧南は荷物の整理を続けます。

　気が付けば、それだけで一日があっという間に終わっていました。
「あー疲れた……」
　日ごろバスケット部で活躍して体力はある碧南ですが、片付けの疲れはそれとは全然違います。
　けれどこれからの生活を思うと、頬が緩んできます。
（一人部屋になったので、これからはルームメイトに気がねすることなく思いっきり乙女ゲーをプレイできる！）
　……結局それかよ！　と碧南は自分で自分にツッコミを入れました。
　別にルームメイトがゲームを嫌がったわけではないのですが、なんとなく恥ずかしかったのです。
　自分の趣味を見られることもですが、乙女ゲームが盛り上がってくるとつい大きな声が出てしまうし、床を転がり回りたい気分になったりもするものですから。
（とはいえ、引っ越しと掃除のおかげで今日は思い切り疲れた……）
　ので、積みゲーの処理は後日改めて行うことにしました。
　なんせ一人部屋、いつでも好きなときにゲームできるのですから。
「まずはお風呂で汗を流そう」
　支度をして寮のお風呂へ向かいました。

（一日の労働の後のお風呂って最高……）
　時間が早いのでお風呂は空いていて、のびのびと体を伸ばしていると。
　聞き覚えのある声が響いてきました。
「あれ、あの声は」
　前日までルームメイトだった子が入ってきたのでした。
　もう一人の女の子に話しかけています。
「こんにちは、新しいルームメイト決まったの？」
　朝まで一緒だった子に挨拶するのは変な気分でした。
　元ルームメイトは、一緒にいる子がそうだと紹介してくれました。
「そうだったんだ。私が彼女の元ルームメイトなの。もう引っ越しは終わった？」
　その子の新しいルームメイトの話や、元ルームメイトのすごさなどについて、三人は色々と話に花を咲かせたのでした。