留年だけはご勘弁！　～追試編～｜リアクション

留年だけはご勘弁！　～追試編～

　響蒼留人は追試会場にて、試験管の黒崎俊介先生の説明を聞きながら、
「あと一点だったのに」
　そう呟いた。赤点回避まであと一点。一点足りなかったのだ。ケアレスミスが悔やまれる。
(美術で留年はないと思うが、挽回しなきゃな)
　試験が開始されたところで、何故か教室内が騒がしくなった。
(……って、なんじゃこりゃっ)
　机の上でミニミニなアイハラ先生とキリシマ先生達がやりあっていた。アイハラ先生側は剣や弓に魔法、キリシマ先生は戦車やドローンを駆使して戦争を始めたのだ。
「……幻覚か？」
　目を擦っても消えない。そして黒崎先生には見えていないらしい。
　教室の天井付近で稲妻が鳴っている。目が合った穂現まうにも見えているらしい。呆れ顔だったので激しく同感だ。肩をすくめ、彼女から目をそらした。
「とりあえず追試だっ」
　剣と魔法世界VS機械世界という感じの戦いは観戦したいところだが、こればかりは疎かに出来ないのだ。
　矢が手に当たったり、氷の魔法で爪が凍ったりしているが、問題用紙に集中する。
(気になる……！　キリシマ先生達が拘束魔法陣で一網打尽になってる、が)
　無理矢理問題を頭に入れる。
(あ、旗をデザインする問題？)
　ふと見ると、アイハラ軍のユニコーンが駆けて行く。
(ユニコーン、いいな)
　旗のデザインとして真ん中に配置してもいいかもしれない。と、そんなことを考えていると、キリシマ軍の機械のペガサスが出現した。
(こ、こっちも悪くないっ)
　いっそ、角と羽を持った白い馬を描いてしまおうか。
(よし、それで行くか)
　モデルが目の前にいるので、だいぶ描きやすい。
　そして最後、クロッキー。別用紙で出されている。問題は運動をしている人間を描きなさいというもの。これは追試だけであり、描くだけで点数を稼がせてくれる。追試は点数配分が変わっているのかもしれない。
(剣を振る……剣道で行くか)
　良いモデルを見つけて、すぐにペンを走らせた。
　やがて、すべての問題を解き終わり、一息をつく。
「あ」
　キリシマ軍が拘束魔法陣から逃げてしまっていた。
(頑張れ、もう一回だ)
　アイハラ先生達が術式を唱えているようだ。それをドローンが阻止しようとする。
(あっ、危ないっ)
　しかし、凛凛しい表情のアイハラ剣士が現れ、ドローンを真っ二つに。
(おお！)
　強力な拘束魔法は教室内を照らす。どうやら、アイハラ軍の勝利は近いようだ。
　夢中で観戦していたようで、時間は過ぎ、追試は無事終了。
　気を抜いて教室へでたところで姉と鉢合わせたが、速攻で逃げたのだった。後で突っ込まれたら言い訳しておこう。

　ちなみに旗のデザインは二重はなまるをもらってしまった。

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