留年だけはご勘弁！　～追試編～｜リアクション

留年だけはご勘弁！　～追試編～

　椎井莉鳥はため息を吐いた。これから音楽と美術の追試を受けることになっているのだが気が重い。進級は決まっているし、最も重要な国数理社英の成績は平均を上回っている。しかし、芸術科目である音楽37、美術が32と酷い有様なのだ。
　芸術的才能が欠如しているのは自分で分かっているので気乗りしないが、避けては通れない。
　席について音楽のテストの問題用紙へ集中しようとした時、弓矢が莉鳥の目の前を通過した。
「……ん？」
　半分心の中で呟く。教室を見回すとミニミニ相原まゆ先生と桐原義弘先生が増殖し、弓矢ら剣やら魔法やらヘリやらドローンやらロボやらを駆使して大戦争を繰り広げていた。
「……」
　銃声がこの上なくうるさい。
（無視無視）
　問題用紙の上に戦車が走ってきた。さらにヘリから落下しいしてくる精鋭部隊、どうやら問題用紙の上で始まるようだ。
　莉鳥は軽く舌打ちをする。驚くほどイライラする。大事な追試だというのに。
（この問題は……）
　と、剣を振り回すアイハラ先生が莉鳥のシャーペンの芯を折った。
「っ！」
　莉鳥は手刀を作って、机にいる者全てを薙ぎ払った。
「おい、攻撃してきたぞ、こいつを倒せー！」
　あろうことか、標的を莉鳥に変えたらしい。
　弓矢を構えたアイハラ軍を拳で静かに潰す。さらに回答を書く振りをしてシャーペンで追い回す。
「炎の魔法弾を放て！」
　その言葉の通り火球が飛んでくる。
　莉鳥はそれを手のひらでまとめて打ち返す。すると、

　ドドドドン！！

「ぎゃああああっ」
　机の上が火の海に。煙と共に火が治まった時、アイハラ先生達が一掃されていた。
「ふう」
もちろん、テスト用紙は無事だ。
ようやく静かになったのも束の間、莉鳥の耳元や頭上で羽音ならぬ、プロペラの音がし始めた。ペガサスや箒に乗った魔女型アイハラ先生とドローンやヘリコプターでの空中戦が今始まる。
　と、目の前をドローンが通過した。
「ふっ」
　息で吹く。するとそれらがバランスを崩し、ふらふらふら～と地面へ落下していく。
「おい、ドローンが消えたぞ！　どうなってる！？」
　莉鳥は空中戦を開始したそれらを次々と吹き落としていく。
　そして見直しが終わった最後に、小さく伸びをする振りをして空中戦の参加者達を両手で一網打尽に。ポンと音がして消えたのだった。
　再び机の上に上ってきていた彼らが答案用紙の上に乗ったところで、消しかすと一緒に机外へ吹き飛ばす。極めつけはテスト用紙を持ってバタバタとなびかせる。
　机の上が片付いたところで、黒崎先生が合図を出して試験は終了したのだった。

　邪魔はされたものの、音楽53点、美術56点と健闘したのだった。

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