猫vs人！お寿司争奪戦！｜リアクション

猫vs人！お寿司争奪戦！

◆群隊との対峙
　一方その頃、美野梨は。

「ここまで来るとは骨のある兵だな」
　他の猫達に比べ、一際低い猫の声がその場に響く。美野梨がその声の元へと振り返ると、そこに眼帯を着けたずんぐりと太く大きな猫が立ち塞がっていた。

「狙った獲物は逃さん。俺の群れがいる限りな」
　ショーグンが低く声を上げる。刹那、物陰に隠れていた猫達が一斉に飛び出し、ショーグンの後ろへと横列を成して並び、美野梨の行く手を阻んで行く。その猫達の背には、機関銃が取り付けられており、威圧するように銃口を美野梨へと向けられている。その統率の取れた動きに美野梨はさすがね。と声を漏らす。

「その獲物を差し出してもらおう。もっとも、抵抗されんのはつまらないがな」
「えぇ、抵抗はさせてもらうわ。このお寿司は、お客さんの元へ必ず届けてみせるわ」
　一歩前に踏み出すショーグンを見据え、美野梨は肩から下げた黒いバッグを抱え、構える。その様子を見て、ショーグンは目を瞑り笑う。

「ふんっ、良いだろう。ならば……征くぞ！　ターゲット：ブラックバッグ、ニ班は退路を塞ぎ、三班はターゲット確保へと向かえ。一班は兵の動きに追従し、行動を制限させよ。深追いは禁物と心得よ。ラインの防衛に努めろ。心得たならば、ミッション：スタート！」

　ショーグンの流れるような作戦指揮に、猫達は一斉に動き出し、美野梨の背後と側方へと回り込むと、美野梨の動きに注視するようにじりじりと迫り、牽制をし始める。

「見事なものね。完全に初動を塞がれてしまったわ。こうなったら、出し惜しみもしておけないわ」
　美野梨は奥の手と思い温存していたポーチへと手を伸ばす。迫る猫達を見据えながら、美野梨はポーチの中を手で探り、取り出した物を素早く前方上方へと投げつける。それはよく跳ねることで有名なスーパーボールだった。

「擲弾か、翻弄されるな！　機銃掃射！　迎撃せよ！」
　宙に投げられたスーパーボールが、山なりに降下しようとした時、猫達の背に携えられていた機関銃が火を噴いた。スーパーボールはあっという間に弾け空中で四散する。

「奥の手はそれだけか。呆気なかったな」
「それはどうかしら？　効果は出始めているわよ」
「なに？」
　ぱらぱらと空中から何かが降り注ぐ。刹那、統率の取れた群隊の一部が突如崩れだし、猫達がごろごろと地面に転がったり、明後日の方向に走り出したりし始める。これはスーパーボールに付着していたマタタビによる効力だった。宙から飛翔したマタタビは隊を次々と乱していく。

「ふん、なかなかやるな。ならば全軍後退！　フロントラインを下げ迎撃作戦に移行する。敵の毒に呑まれるな！」
「毒とは言ってくれるわね。指揮は立派なものだけれど。あなたは抗えるかしら？　これのもつ魅力に」

　美野梨はポーチの中から何かを取り出す。そう。それこそが美野梨の用意した最後の奥の手。真の最終兵器だった。

　それを見れば猫まっしぐら。理性等瞬時に吹き飛ばす魔力的美味しさを誇る猫おやつ『ニュール』だった。そのフォルムを視認し、匂いを嗅いでしまえば、如何に隊を率いる将であろうと走らずにはいられない。

　宙に放り投げられたニュールを、ショウグンは見事な跳躍で以てキャッチする。その瞬間、ショウグンの表情がしまった！　と焦りの色を見せる。言葉に出せなかったのには理由があった。

「そのニュール、糊が入っているの。体に害はないから大丈夫よ」
　そう。ニュールにたっぷりと入っていた糊。それによってショーグンの口は塞がれたのだ。指揮を送る際声に頼っていたショウグンは、完全に指揮系統を絶たれ、群れは壊滅（戦意喪失）してしまった。

「私達の勝ちの様ね。楽しいお祭りだったわ。これからは悪さしちゃダメよ？」
　口を塞がれたショウグンは、ぐぬぬ、と表情を曇らせ敗北を認めた。

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