猫vs人！お寿司争奪戦！｜リアクション

猫vs人！お寿司争奪戦！

◆MUSIC：START！
　旧市街の商店街。その道を通る二人を見て、猫達は待ってましたと言わんばかりに集まり立ち塞がっていく。あっという間に行く手を塞がれ、お寿司をバッグに抱えた美野梨はじりっと、歩を止められてしまう。

「来たわね猫ちゃんたち。このお寿司を奪えるものなら奪ってみると良いわ」
「にゃー！　にゃー！」
　刹那、猫達が宙を飛び、次々と遠海の手にした岡持ち目掛け突撃し、ベッタリと張り付いていく。

「って、えぇっΣ　飛んでくるなんて聞いてないわよー！」
　あっという間に猫まみれになる岡持ちを見て、遠海は驚き、ずしりと重くなった岡持ちを手放す。猫達はすかさず岡持ちをかりかりと引っ掻き始め、扉を開かせた。

「んにゃぁーん！　にゃにゃぁ〜ん！　ん〜にゃぁ〜」
　開け放されたマタタビの匂いに猫達はすっかり骨抜きにされてしまい、ごろごろと転がる猫達で商店街は一面極楽絵図になってしまう。

「にゃあ。ちょっと効きすぎたかしら。……今声を聞くと恥ずかしくなるわね///」
「こんなに効果出るのねー、マタタビって。幸せそうでちょっと羨ましいわ」
　お腹いっぱいにマタタビを堪能する猫達を見て、美野梨はくにゃくにゃになった猫達の声に恥ずかしくなり、遠海は早く私もお寿司食べたい！　と思うのだった。

　住宅街に差し掛かると、日向ぼっこしていた猫達が、うにゃっ？　と顔を上げ始める。どうやら寿司の匂いに目覚めたようだ。猫達は次々と集まり美野梨のぶら下げたバッグへ向かい飛び掛かろうとしていく。

「まだ沢山いたのね猫ちゃんたち。そのお寿司は渡さないわ。私の魂の叫びを聞け―っ！！」
　遠海は肩に掛けていたベルトを回し、ワイヤレスキーボードの電源を入れキーを入れる。刹那、ドーン、という低く大きな音が鳴り響く。その序曲の様な音に、猫達はびくりと背筋を硬直させ動きを止める。

　遠海の奏で始めた音はニ奏にも聞こえ、薄暗い場所を彷彿とさせる音に、その中をまるで低く唸る生き物の息遣いが徘徊するような音を同時に鳴らしていく。段々と息遣いの様な音色が早くなると、突然その音が大きくなり、緊迫した曲調へと変転していく。その迫力満載の音に、猫達はにゃぁーっ！　と悲鳴を上げ逃げ始める。

「中々気分出てきたわねー！　よーし、もっと盛り上がっていきましょー！」
　遠海はより猫達を遠ざけるように、猫達を追い掛け走りながら、コートのボタンを外し、バッと脱ぐ。刹那、ショッキングパープルのロックなＴシャツ姿が現れ、履いていた黒いジーンズと合わさり、ロッカーな雰囲気を醸し出していく。先程まで清楚なお嬢様風な見た目だったため、物凄いギャップを感じる。その光景を眺めていた者達がおぉー……と息を呑んでいった。

「うにゃーっ！！なにか怖そうなのが追いかけてくるにゃー！」
「ぼく達は食べてもおいしくないのにゃー！　こっちこないでにゃー！」
　美野梨には音に怯えて逃げる猫達の声が聞こえていた。

「効果抜群のようね。良い仕事をしてくれたわ」
　美野梨は逃げる猫達を追い掛け遠ざかって行く遠海を見送り感謝しながら、近付きつつある出前先へと向かい走っていく。

　ところで、実は遠海は規格外の方向音痴であるのだが、猫を追っていって大丈夫なのだろうか？

「へえっ？！　ここどこなのよー！　私のお寿司ー！　待ってなさいよー！　くしゅんっ！」
　興に乗り夢中で演奏していた遠海は、いつの間にか寝子島海岸まで来てしまっていた。観客（猫）達も去ってしまい、熱も冷めTシャツ一枚で寒さを感じながらコートを羽織り、当て所もなく寿司屋を探し戻っていくのだった。

このページにイラストを設定する