俺達の旅立ち｜リアクション

俺達の旅立ち

≪2日目≫
【東京】

　翌日。３人は眠い目をこすりこすり、純和風の朝ごはんを頂いた。エネルギーも入り、朝の光で半ば強制的に頭を起こし、持ち前の若さが体中に回った彼ら。仲居さんや女将さんに元気に挨拶をして、宿を後にした。

「こうやって気兼ねなく泊まりも過ごせる仲ってそうそうないよな！」
「れんちゃんとこにもいつか遊びに行っちゃおう☆」
「イタリア語できるのか？」
「え、えっと……ボルシチ！」
「そりゃウクライナの料理だ……」
　カタンコトン。ゆったりと海を渡る寝子電。少し空いたその車両に乗りながら、波に煌めく日光に頬を輝かせ、いつものように楽しく会話をする３人。こうして本土に着くと、武道と正也は互いに大きめな煉の荷物をもってやりながらまた電車を乗り継ぎ、3人は東京に着いた。

　煉のフライトは夕方。エアポートバスが駅を出るまでまだまだ時間がある。それならと、武道がパチンとウインクして２人に言った。
「なあ……バスの時間まで東京観光しない？」
「さんせーい！」
「ん、異議なし」
　少々の寝不足などなんのその。そうと決まればと手早くコインロッカー探し。荷物を入れて、フットワーク軽く大都会へ繰り出した。
　鉄道を駆使すれば、東京はどこへでも行ける。うまく時間を使いながら、３人はたくさん観光名所を回り、仲良く写真を撮った。そして、その途中でも寄ってしまうのが、大好きなゲームセンターだ。
「おー、さすが東京。最新機種がいっぱい☆」
「なあなあ、点数対決しようぜ！　負けたやつがおごりな！」
「ありがとう、正也。ごちそうになるよ」
「にゃにおう！」
　賑やかで煌びやかな空間に、テンションも上がる。寝子島で何度もした彼らのゲーム対決は、東京でも最高にエキサイト。笑ったり、悔しがったり。勝者も敗者も存分に楽しんだのだった。

　狭いはずなのに、遊び倒すには広すぎる東京。時間はあっという間に過ぎ、東京駅に戻った３人は、成田空港行のバスに乗り込んだ。多い煉の荷物は、正也と武道の持ち込み分として。ここに着いた時の荷物は駅のロッカーにいれたままでいいのだ。また、帰り道に寄れるから。……人数は１人少なくなっているけど。
　イタリアでの未来の生活が詰まった煉の荷物が、バスに積み込まれる。乗客を乗せ、走り出すバス。流れる車窓の景色。いつもと変わらずお喋りをする３人だが、少ぉしだけその口は重くて。景色と一緒に、この言いようのない寂しさも流れてしまえばいいのに。
　色々な思いを抱えた３人を乗せ、バスは東京を離れていく。飛行機の発つ時間だけが、彼らを静かに追ってくる。