俺達の旅立ち｜リアクション

俺達の旅立ち

【空港：展望デッキ】

「そろそろ離陸か。展望デッキ行こうか、きりのん」
　多様な人が行き交う空港内の喫茶店でコーヒーカップを置き、武道が言った。「ああ」と正也が力強く頷き、２人は店を出る。そしてターミナルの５Fに向かった。

「おお！　ちょうど夕暮れかー。綺麗だな！」
　展望デッキに出た正也は一面の赤に、瞳を輝かせた。周囲に高い建物もない、壮大な空のグラデーションは、昨日の九夜山での夕暮れを思い出させる。
「れんちゃんの飛行機はどれかな……。あ、あれかな」
　武道はゆっくりと離陸のため動き出している飛行機を指した。煉と別れてから１時間。彼らは空港で時間を潰し、デッキに見送りに来たのだ。
　滑走路の端までゆったりと動く飛行機。緩慢な動きを見ているとのんびり屋の象のようで、とてもあんな巨体が飛ぶなんて思えない。しかし、動きを止めた飛行機からキィィーンとエンジンの高い音が滑走場に響き渡ると、飛行機は己の力を思い出したかのように長い滑走路を走り出す。スピードに乗る機体。滑走路から飛び出てしまうのではと思ったその時。ふわりと魔法のように飛行機はその巨体を陸から離した。
　滑走路は切れてしまうが、空はどこまでも続いている。残照に溶け込むように輝きながら飛んで行く煉を乗せた飛行機。その姿は小さくなり、やがて赤い雲の向こうに消えていった。

「行っちゃったなー」
　柵を掴み、正也は夕空を仰いだ。その表情はどこか爽やかだ。
「きりのん、泣かなかったね。チョット心配してた☆」
　武道が少しおどけて言う。正也はポリと頬を掻いた。

「ああ。自分でも意外だったんだけど……寂しくはなるけど、これが永遠のお別れじゃないもんな。
なんつーか、心は繋がってる、みたいな？」
　あ、臭いなんて言うなよー！　と正也が少し顔を赤くして言う。武道は微笑みながら首を振った。

「言わないよ、そんな事。俺もそう思うもん」
　―――嬉しかった。同じ事を考えている親友が。どんな時にも途切れる事なんかない友情が。

「よぉし、帰ろうか！　あ、途中でまたゲーム対決ちょっとする？」
「いいな！　負けた方夕飯奢りな！」
「ありがとう、きりのん。俺ガッツリ肉所望ね☆」
「だから何で俺奢る前提？！？」
　わいわいとじゃれ合う２人。そして彼らは赤い光を背に受けながら、しっかりと歩き出した。

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