自然とフツウを奪還せよ！｜リアクション

自然とフツウを奪還せよ！

「先生が？　まさか……」
　テレビの放送を見ていた八神修が信じられない、といった表情で狼狽する。普段冷静沈着な修はあまり取り乱すことはない。それ程までに修は放送を見て驚いていた。

　修が先生と呼ぶ黒崎俊介は、修にとって恩師であり、師匠だった。修は様々なことを俊介から教わり、科学の発展と真理の探求に努めてきた。その恩師が今、道を外そうとしている。修は居ても立っても居られなくなり、急いでジュラルミン製のバックパックを肩に下げ、ガレージへと向かい走り出す。

　ガレージに着いた修は、素早くバイクに被せていたカバーを取り払い、バイクに飛び乗った。修がバイクのモニターに指を走らせた瞬間、承認の音と共にバイクのエンジンが掛かり、修の前にフルフェイスヘルメットが浮上する。修はメットを装着すると、フェイスカバーの奥で表情を引き締めさせ、バイクのアクセルを開かせた。

　ガレージの扉が開くと同時に、滑走路を走るバイクが、滑走路の先の跳ね台から飛び出し、バイクは宙を舞う。刹那、バイクに取り付けられた巨大なプロペラが旋回を始め。風を発生させ浮力を得る。浮力を得たエアーバイクは、プロペラが空を切り裂く様に、高速で走行していく。この技術はまだ実用化段階の物で事故の危険を孕むかもしれない。しかし、操縦する修が速度を緩めることはなかった。

　地上の動物達が宙を見上げ振り返る程の爆音を鳴らしバイクは走行していく。空を飛んでいた動物達は、行く手を阻む様にバイクへ襲い掛かる。

　刹那、動物達の動きがぴたりと止まる。それは目標を失ったからだった。修はエアーバイクを咄嗟にステルスモードに切り替えていた。電子・目視・音（振動）・臭気的に認識不可になるパーフェクトなステルス機能を持っていた。修は動物の群れをかいくぐると、再びステルスモードを解除し、全速力で走行して行く。
(あの発射場ならまだ間に合う……間に合わせる……！)

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