【期末テスト】満点？留年？？早春、四日間の死線＜物語編＞｜リアクション

【期末テスト】満点？留年？？早春、四日間の死線＜物語編＞

☆テスト返却　２年３組＆ののこの成績

　万条幸次は、２年３組の教室でテスト返却を待っている。
　生徒の名前を呼んでいく早川珪先生の声からは、内心の動きは読み取れない。
　どの生徒に対しても公平であろうと努めているのだろうか。
（今更心配しても仕方ないよね）　
　そうは思うけれど、やっぱりいつものようにのんびりぼーっとしているわけにもいかない。
（進級がかかっているから頑張ったし、きっと大丈夫……それでもだめなら、補習頑張るしかないけど、なんとかなる……はず）
　普段の授業なら戦っているはずの眠気も感じない緊張感の中、自分に言い聞かせる。
「万条幸次君」
「……はいっ！」
　名前を呼ばれて、幸次は立ち上がり先生の元へ向かった。
「……！」
　真剣な顔で点数をチェックした幸次は、ほっと息を吐きだした。
（どれも５０点以上。留年は回避かー。よかったー……）
　安心したら一気に眠気がやってきた。
　もはや睡魔に抗う理由を持たない幸次は、そのまま心地よい眠りにつくのだった。

　キーンコーンカーンコーン。
「あ、休み時間か……」
　チャイムが鳴り目覚めた幸次は、伸びをして廊下に出た。
　すると友人の恵御納夏朝と出くわした。
　夏朝は１年の時クラスメイトであり、猫好きコミュニティ『ねこみゅ』の猫好き仲間でもある。
「あ、恵御納さん」
「万条くん……こんにちは。テスト、どうだった？」
　夏朝は小声で聞いてきた。
「うん、どうにか留年は回避したよ」
「良かった……僕も大丈夫だったよ。これからののこちゃんの様子を見て来ようと思って」
「ああ……大丈夫だといいね」
　ののこもまた『ねこみゅ』の仲間であるが、留年に関しては幸次より心配な成績と聞く。
「うん、それじゃ」
　夏朝がののこのいる４組の方へ向かおうとした時。
　ちょうど４組の教室からののこが飛び出してきた。
「あ……ののこちゃん、あの、テスト大丈夫だった？」
　夏朝の問いかけに、傍らの幸次も固唾を飲んで答えを待つ。
　答えようとするののこの表情は、普段見たことのない奇妙なものだった。
「どどどど、どうしよう～」
「ど、どうしたの？」　
　ただ事ではない様子に、幸次は心配になった。
　だがののこの顔に絶望はない。
　むしろ口元は緩み、笑いをこらえているような……
（まさか、ショックでおかしくなっっちゃった？）
「ののこちゃん、落ち着いて」
　夏朝が廊下の隅にののこを誘導し、意を決したように口を開く。
「あの……留年なの？」
「うーんとね、０点が１つあった」　
（やっぱり……）
「ののこちゃん……気を落とさないで。一緒に猫を見に行こう……」
　夏朝がそう声をかける。
　幸次は何と声をかけるべきか迷っていたが、ののこは続けた。
「でも１００点があった！」
「えっ」
「１００点が、ひいふう、四つも！」
「……えっ？？？」
　自分の耳が信じられず、今度こそ二人は絶句したのだった。

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