ニンジャ・サムライ・ジダイゲキ｜リアクション

ニンジャ・サムライ・ジダイゲキ

●展示会場でのひととき

「……なんで時代劇の世界になってるの？」

　森篠琳子は困惑していた。
　見慣れた建物はどれも木造建築に変わり、人々は和服で生活している。自分の格好もまるで時代劇の登場人物が着ているもののようだった。

（きっとこれは夢なのかもしれないわね）

　あまりに突然のことで、琳子はそう考えるのが自然だと思った。

（それなら、夢なら夢で、いつ覚めるかわからないけど、この世界を楽しみましょうか）

「お姉ちゃん、そろそろ細工物の展示会に作品を届けるんでしょ？」

　気持ちを切り替えたところで、妹の奏子が声を掛けてきた
　どうやらこの世界では、琳子は何かしらの小間物をつくる職人らしい。

　琳子が作ったのは人形。
　一つ一つ丁寧に作られていて、綺麗に仕上がっている。
　自分が作ったとは思えないほどで、つい見とれてしまう。

「お姉ちゃん、早く！」

　奏子の声ではっとする。人形を抱えると奏子のもとへ向かう。
　家の外には奏子と、荷車を引く男性が待っていた。

「おかなちゃん、お姉ちゃん来たみたいだぜ」
「あ、ほんとだ」

　どうやら奏子は『おかな』と呼ばれているらしい。

（ということは、私は『おりん』？）

　そんなことを考えていたら、妹にせっつかれたので急いで人形を荷車に乗せて展示会の会場へ運ぶ。
　展示会場は大勢の人でにぎわっていた。
　琳子は用意されていた場所に、自分が作った人形を飾る。道行く人々がその人形に興味を示し、何人か足を止めた。

「その人形ください」
「ありがとうございます」

　１人、また１人と琳子の作品を客が買っていく。
　どうやら好評だったようだ。そうして売れていき、２時間ほどで完売した。先ほど訪れた客の中には、島全体を治めている中沢理狩土や茶屋の看板娘・おののの姿もあった。

（あの人形、大切にしてくれたらいいな）

　手元を離れた人形と、それを手にした人々の顔を思い浮かべる。
　まだ展示会の終了まで時間が残っているが、自分が使っていた場所を片づけた。そして妹と一緒に他の展示品を見て回る。

　人形だけでなく、かごや竹細工、家具に切子細工。
　その他さまざまな小間物が会場に並んでいた。

（どれ一つとっても素晴らしい出来栄え……）

　その作品たちに感心しながら、この空間を楽しんだ。

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