ニンジャ・サムライ・ジダイゲキ｜リアクション

ニンジャ・サムライ・ジダイゲキ

●落語の面白さ

　水守流はすっかり雰囲気の変わった寝子島を呆然と眺めていた。どの建物は木造建築に変わっているし、すれ違う人々は和服を着ている。

「何が起こっているんだ……？」

　ただ流は混乱していたが、取り乱してはいなかった。

「テオのやつが危ないとか言ってきてねーなら、そこまで焦る事もあるめぇってな」

　寝子島に変化が起こるのはたびたび経験している。
　なかには大惨事になりかねないような事態もあるが、もしそうならテオがなにか伝えてくるはず。裏を返せば、この異変は脅威ではないのだろう。

「ま、そのうち元に戻るだろうし。今は時代劇な世界を楽しむか」

　流は観光しようと街へ繰り出した。
　よく知った街並みも、建物や道が変わるだけで印象がだいぶ違う。まるで初めて来たかのようにその違いを楽しむ。特に目的地も定めず、ふらっと旧市街に訪れた。

「お、映画村が歌舞伎劇場と寄席になってるじゃねーか」

　どっちも気になるが、寄席から入ってみる。

「ほうほう、今日の落語公演のネタは……『猫こわい』？」

　他にもいろいろあるが、どれも初めて聞く内容ばかりだった。
　試しに建物に入ってみると、小さめの舞台があり、客席には座布団が敷かれていた。流は料金を支払い、座布団の１つに腰を下ろした。公演の時間が近づくにつれて、流以外の観客が増えてきた。

「おっと、落語が始まったら静かにして聞くのに集中しなくちゃな」

　他の客とともに拍手で噺家を迎える。

「えー、しばらくお付き合いをお願い申し上げます」

　語りを交えて場を温めると、演目『猫こわい』が始まった。

「ある夜、町の者が集まって嫌いなものを言い合っておりました。皆が『クモ』や『ヘビ』というなか、『猫』だと言い出すものがおりました」

　緩急をつけた話し方にみるみる引き込まれていく。
　登場人物を演じ分けて、見ている人々を飽きさせない。

「猫に囲まれて満足そうな男。集まった者たちが騙されたことに気づいた。本当に怖いものはなんだと問われて、その男はこう答えた。『猫缶がこわい』。ご清聴、ありがとうございました」

　再び大きな拍手が会場を包んだ。

「んはー！　すげーな落語！　あの語りっぷりですっかり引きずり込まれちまったぜ」

　寄席を出ても、流の興奮は収まらなかった。
　落語がどういうものか詳しく知らなかったけれど、その面白さを強く感じていた。

「こんだけおもしれーなら今度落語のDVDとか借りてみっかなー。今日聞いたネタも他の噺家がやるとどうなるのかってのも気になるぜー」

　他にも歌舞伎などの公演を巡って、この世界を思う存分楽しんだ。

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