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after the mirage
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「探したよ、愛しい子」
梔子(くちなし)か。
蝋梅(ろうばい)か。
病室は、むせ返るほど濃密な花の芳香(かおり)に満ちている。
彼女――
葉利沢 倫理子
いや
Malice
の引き入れた香りだ。消毒液やガーゼの匂いは、とうに片隅へと追いやられていた。
ベッドの上は白い海。
もつれあうは、二匹の海蛇のような女と女。
あるいは、捕らえた子鼠をもてあそぶ猫だ。
たとえ鼠の腕がもげようと、あるいは生皮が剥がれ朱にまみれようと、猫は玩具(オモチャ)に飽きずいたぶり続ける。その様子に似ていた。
Maliceは口づけだけで
朝鳥 さゆる
を犯した。
まずは唇、喰らいつくようにむさぼり、吸い、歯をつかって噛みさえした。毒々しく真っ赤な、されど美しい蛭(ひる)のごとく、Maliceの唇はさゆるの唇から離れることがない。
それに舌、甘露に似た粘液をしたたらせ、閉じられた前歯をこじ開けて口中に割り入りさゆるの舌をからめ取る。血の味まじりの唾液を注ぎ、さゆるを溺れさせようとした。窒息を避けるためにさゆるができることは、もはや嚥(の)み込むことだけだ。
さらに呼吸すら使った。自身の呼気をさゆるに吸わせ、さゆるの吐く息を自分のものとする。はじめ、不揃いで乱れた喘息発作のようだったふたりの息遣いは、いつしかひとつの蒸気機関であるかのように、熱く湿ったものへと変わっていった。
何分間これが続いただろう。
数分か数十分かそれ以上か。
時間感覚の歪んださゆるにとって数時間にも感じられたひとときが過ぎたころ、ようやくMaliceの蛭はさゆるから外れた。
けれどこれで許すつもりなどない。
つづいてMaliceはさゆるの顎を口に含み、滑り降りるようにして白い首筋へ、さらに下へと吸い付く位置を変えていったのだから。さゆるの肩をつかんでいた右腕も、すでに胸をわしづかみにしている。細かく指先が動いているのは、さゆるの敏感な箇所を探しているからだろうか。
しかし、
「……つまらない」
唐突にMaliceは腕を離した。唇も。
手の甲で口をぬぐう。
飛び立った白い鳩が残した羽のように、音もなくさゆるの体はベッドに沈んだ。
「まったくの無抵抗。本当につまらない」
今のあなたは、とMaliceは顔を向けたがさゆるは見つめ返すことすらしなかった。無言で天井に視線をさまよわせている。
自分以外見ることを許さないとばかりに、Maliceは両手をベッドについてさゆるに覆いかぶさった。ぬめぬめとした光が両眼に宿っている。
ねえ、と造花のような笑みで呼びかけた。
「これでは人形を抱いているのと変わりない。舌を絡めるでもなく、逆に舌を噛み切ろうとするでもなく」
さゆるは答えない。
「どうしたの? 欲望でもいい、憎しみならなおいい。その両方が混じっているのが理想だけど――なんでもいいから私に感情を剥きだしにして見せて、愛しい子」
せっかく、とMaliceは言う。
「こうして探しだしてあげたというのに」
さゆるはやはり何も言わない。はだけられた病院着の前だけ直した。
Maliceはため息をついた。
「一週間も病院に閉じ込められたんじゃさすがに生気も失せる、か」
半日声を枯らしてなんの上がりもなかった花売りのように、Maliceはベッド脇に腰を下ろすと膝を組み、重なったところに腕をのせた。
扉の外、遠くから、看護師を呼び出す院内放送が聞こえた。エコーがかかっているせいもあり、音が小さく聞き取れない。
この病室に放送が入らないのは、Maliceがなんらかの細工をしたからだろうか。
花に似た香気がいつの間にか失せている。
慣れてきただけかもとさゆるは思った。
花嫁のヴェールのように、ゆっくりと沈黙が降りてきた。
聞こえる音は壁かけ時計の秒針ばかり。
やがて、
「……どうやって知ったの」
根負けしたように口をひらいたのはさゆるだった。
「あたしがここに入院してるって」
「ああ……聞きたかった。さゆるのその声を。本当に寂しかったの」
待ってましたとばかりにMaliceが応じる。恋人から渡された花束を腕に抱くような表情を浮かべていた。
「とぼけないで」
冷め切ってはいるものの、かすかな苛立ちが混じった口調だ。
そうでなくては、と言いたげにMaliceは唇を舐め、
「急かさないでよ……種明かししてあげる」
人差し指でシーツをなぞった。
「あの夜のこと、覚えてる?」
問いかけのかたちこそとってはいるが、さゆるの返事は待たない。
「昼も夜もなく、本能が壊れたように互いの躰に溺れたわ、私たち」
蜘蛛が這うように手を、少しずつさゆるに近づけていく。
「脳が溶けるみたいな、全身が性感帯になったみたいなひととき。忘れられないわ、床まで濡れるほど求め合ったこと、春のけだものだって出さないような声であえいだこと……」
「そんなことが聞きたいんじゃない」
さゆるはMaliceの手を払いのけた。Maliceは軽く首をすくめる。
「数えるのもバカらしくなったほどの絶頂の果てに目が覚めたら……さゆる、あなたは姿を消していた」
まだあなたに逃げる気力があったなんて驚きね、とからかうようにつづけた。
「私は事態を把握すると手早く身支度をすませ、スマホでダークウェブにアクセスした」
「……ダークウェブ?」
「実体は知らないほうが身のためよ。便利なツール、とだけぼんやり説明しておこうかしら。クリスマス直前にあなたが姿を消したとき、居場所を割り出したのもダークウェブを使ってのこと」
いわゆる裏掲示板の類いだろうか。アンダーグラウンドの情報交換サイトのたぐいかもしれない。援助交際や非合法な薬物の売買に使われるような。
聞き流している風を装いつつも、Maliceの口ぶりに嘘がないことをさゆるは確信している。
この女には、私の所在を捕捉する手段がある。
そのことは覚えておこう。
「物狂おしい気持ちだったわ」
独りでステッラ・デッラ・コリーナのスイートに残されて、とMaliceは告げた。
「どんなに広くても……いえ、広いだけにいっそう孤独を感じた。さゆるがいない部屋にね。毒のある楽園のような空間だったのに」
我が身を哀れむようにMaliceは言うも、さゆるの耳にはひどく空虚な言葉としてしか響かなかった。
楽園というのはMaliceからの見方にすぎない。
さゆるからすればあの場所は、甘い監獄だった。
「部屋で一刻一刻を焦がれるような思いで過ごし、ようやく私はあなたの消息をつかんだ」
お気の毒、とMaliceは言った。
「報道された発砲事件、被害者がさゆるだったなんてね。それだけ判明すれば、この病院までたどり着くのは簡単だったわ」
Maliceは声を殺して笑った。
「ホテルのチェックアウトは翌朝……そうそう」
ジャケットの内ポケットに手を入れると、Maliceは黒革の札入れを取り出した。
「あなたの財布、返しておくわ」
ベッド脇のテーブルに置く。
「さゆる、財布すら持たずに逃げ出すなんて不用心だったわね。ご心配なく、中身には手を付けていない。私は、倫理子の親が彼女に渡したカードを使って支払いを済ませたから」
Maliceは自身の表の人格を、『倫理子』『彼女』と他人のように話した。実際、Maliceにとっては他人なのだろう。
これ、と人差し指と中指で挟んでクレジットカードを取り出す。
俗にブラックカードと呼ばれるものだ。使用額に上限のないステイタスシンボル、正確にはその家族会員カード(ファミリーカード)だが。
中身がMaliceであろうと彼女の姿形は倫理子だ。黒一色のジャケット、白いブラウスにやはり黒のスカート、派手さはない。黙って微笑んでいればクラスの集合写真でも、いともたやすくその美貌を埋没させられるような彼女が、実際の質量以上の重力をもつブラックカードを手にしている姿はどこか異様だ。
そうそう、と思い出したようにMaliceは言い加える。
「脇坂香住、だったかしら? あなたを撃った中学生。弾がなくなるまで撃ったなんて……怯えていたんでしょうね」
握った右手から指を二本立てて拳銃を摸した。
銃口にあたる人差し指はさゆるに向けている。
「不幸中の幸いは、銃撃での怪我がなかったこと。でも発砲の直前、あなたが何者かに輪姦されたという情報も得た。入院はおそらくそっちが原因のようね」
さゆるの視線が動いた。
まさか。
いや、ありえる話だ。
あの夜、背中からナイフを突きつけてきた男。
あらわれたタイミングがよすぎた。行き当たりばったりの犯行にしては用意が周到すぎた。ワンボックスカーまで近くに停めてあったのだから。
ステッラ・デッラ・コリーナから逃れたさゆるが無防備の状態で、着の身着のままでさまよい歩いていることを最初から知っているかのようだった。
Maliceが手引きしたのだとすればつじつまがあう。
自分から逃れた罰として情報を流した。あるいは命じたのか。
もちろん確証はない。問い詰めたところでMaliceははぐらかすだけだろう。
冷え切っていたさゆるの感情に、ゆっくりと血がめぐりゆく。
鮮紅色の動脈血ではない。
どす黒い暗褐色の静脈血だ。
「わかったでしょ、さゆる? あなたは私から逃げられないの」
と言い終えるより先に、乾いた音が立ちMaliceの首がかしいだ。
さゆるが、Maliceの頬に平手打ちを浴びせたのだ。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
プライベートシナリオS(400)
グループ参加
なし
シナリオジャンル
オールジャンル
定員
2人
参加キャラクター数
2人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2020年09月13日
参加申し込みの期限
2020年09月20日 11時00分
アクション投稿の期限
2020年09月20日 11時00分
参加キャラクター一覧
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