アクアアルタで泳ごう！｜リアクション

アクアアルタで泳ごう！

☆猫と学校へ

　八神修は、自転車で学校へ向かいました。
　泥水と違い透明なので、溝にはまる心配もありません。
（非日常感があって自然と心が踊るな）
　と思っていると、
「ワンワン！」
　犬の鳴き声が聞こえそちらに目を向けました。
「ん？　あれは？」
　浮島みたいになった塀に、犬や猫が取り残されています。
「助けてほしいのか。よし」
　修は自転車のカゴに犬を入れ、ハチワレ猫を抱きかかえました。
「高台か水上に出てる建物に避難させよう」
　高台を見つけ、無事犬を下ろしましたが。
「どうした？」
　ハチワレ猫が、修の服に爪を立て、離れたくないというように顔を摺り寄せます。
「……離れたくないのか？　仕方ないな」
ちょっと迷った修ですが、背鞄を下ろしそこにハチワレ猫を入れました。

「まるで大きな海水プールだな」
　学校に着いた修が思っていると。
「きゃっほー！」
　ぱしゃぱしゃという水音と共にはしゃぎ声が聞こえてきました。
「野々にあおい、先生まで！？」
　野々ののこ、七夜あおい、それに相原まゆ先生が、水着姿で泳いで遊んでいます。
「修くん！」
「皆学校に来てたんだなあ。俺は射撃部の部活に来たんだけど……まあ中止だな」　　
　その時、背中でもぞもぞと何か動く気配を感じました。
「修くん、それって！」
　ののこが指さします。
　背鞄を下ろすと、さっき拾ったハチワレ猫が顔を出していました。
「修くんの猫？」
　ののこが尋ねました。
「さっき浮島に取り残されてた子たちを助けたら、離れたくない様子だったんで連れてきたんだ」
「また家族が増えたね」
　あおいが微笑みました。
「部室に猫オヤツあるから取って来るかな。ついでにお土産持って来るよ」
「お土産～？」
　興味津々のののこですが、まゆ先生とあおいも気になっている様子で修の後姿を見送っていました。

「あ、修くん戻ってきた！」
　しばらくして水着姿で戻ってきた修が持つものに、ののこが目を輝かせました。　
「お土産はビーチボール。夏に使ったのさ。折角だからコレで遊ばないか？」
「遊ぶ！」
　カラフルなビーチボールに、ののこは大はしゃぎ。
「いいね」
　あおいも微笑み。
「いいわね、あたしも混ぜてくれる？」
「もちろん」
　童心に返ったまゆちゃん先生に、修は頷きました。
　まずはハチワレ猫にオヤツをあげて、軽く準備運動をしてスタートです。
「それじゃ行くぞ」
　水に入った修はあおいにビーチボールを投げ。
　皆でワイワイ、ボールで遊びました。

「さて、先生はこの辺で抜けるわね。寒くならないうちに帰るのよ」
「はい、先生も気をつけて」
　修が頭を下げ、ののこが手を振って言った。
「先生さようなら～、あー面白かった！」
　まゆ先生が抜けたのを機に休憩することにして、修はぷかりと浮いて空を眺めました。
（水は体力作りに良いから、部活より効果あったかも）
　そんなことを思っていると、あおいが言いました。
「修くん、逞しくなったね」
「え？　いやそれほどでもないよ、ちょっと疲れた」
　謙遜しつつ内心嬉しい修です。
「誰かを護れる男になりたいからね」
「誰かって？」
　ニヤニヤ笑うののこにストレートに聞かれて、修はちょっと考えて答えました。
「それはペット達とか……うん、色々だよ」
　ハチワレ猫のほうを見ようとして、あおいと視線が合いました。
　ふわり、と笑ったあおいに、修も笑い返したのでした。

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