アクアアルタで泳ごう！｜リアクション

アクアアルタで泳ごう！

☆お魚になって、先生と

「やあ、今年も寝子島にアクア・アルタの季節がやってきましたねー」
　薄野五月は水に覆われた周囲を見回しながら、笑みを漏らしました。
「いつもの寝子島が、ちょっと違って見えて、結構好きです。神魂の影響にもいろいろありますけれど、こういうのは歓迎ですー。ふっふ」
　綺麗な水をもっとよく見たくて水面に近づいてみた五月は。
（えっ？）
　気づいたら手がひれとなり、足は尾となり。
　どこからどう見ても魚になっておりました。
　不思議なことに自分の姿が水面に映って見えます。
　それは見たこともない美しい虹色でした。
（虹色に光る魚。やあ、これは不思議な気分ですー。猫になったことはありましたが、魚は初めてかもしれない）
　ひれや尾を動かしてみると、教わったわけでもないのに上手に進みます。
（せっかくなので、このままちょっと泳いでみます）
　すぐに自由自在に泳げるようになりました。

　頭上に通り過ぎる人やボートが見えました。
　水上の景色も水中から楽しむことができるのです。
（誰かお知り合いの方はいますかねー。この姿ですと気づかれないでしょうけれどもー、ふっふ）
　ちょっと気をつけて見ると、一艘のボートの上に見覚えのある人の姿を発見しました。
（……おや、あちらにいらっしゃるのは、担任のクロ先生では？）
　黒崎俊介先生が、ボートでのんびり紅茶を飲んでいました。
（こういう時はボートでのんびり過ごすのも、また良いですよねぇ。ふっふ）

　ふと思い立って、五月はボートに近づいていきました。
（周りをスイスイ泳いでみましょう）
　近づくと黒崎先生は、虹色の魚に気づいてこちらを見つめました。
　五月は心の中だけで『こんにちは！』と挨拶するのでした。
（今日の私はお魚です。魚のままで過ごしましょう）
　そのまましばらくボートの流れについてのんびり泳いでいきました。
「おや、君も一緒に来るのかい？　一緒にお茶が飲めるといいのだけどね」
　黒崎先生はちょっと不思議そうな顔で紅茶カップを手に、五月を見つめながら話しかけてくれました。
『そうですねー、この姿ではお茶も飲めないし蕎麦も食べられませんが』
　それでもこうしてのんびりするのは、とても気持ちのいい時間でした。

　しばらくそうしてのんびりした五月は、
『あんまり飲みすぎないでくださいねー』
　と、やはり心の中だけで言って、スイスイ泳いで離れていきました。
　

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