アクアアルタで泳ごう！｜リアクション

アクアアルタで泳ごう！

☆猫を助けて

「今年のアクアアルタも綺麗……！」
　めったに見れない景色に目を輝かせた恵御納夏朝でしたが、気になることがありました。
「……猫さん達、困ってる子もいるかも」
　夏朝は急いで水着に着替えて、上には濡れてもいい服を着ました。
　それから水に浮くサンダルを履いて、ホームセンターに向かいました。
「ビニールボート……レジャー用の透明じゃないやつ……これだ！」
　夏朝はオールとポンプのついた丈夫なビニールボート買い、すっかり増えてきた水に浮かべました。
　乗りこんで、付属のオールで漕ぎます。
「困ってる猫さん等がいれば助けるよ」
　さっそく夏朝は、水に囲まれて途方に暮れた様子の親猫と子猫をたち見つけました。
「ニャー。ミャー」
「よしよし、今助けるよ」
　夏朝はボートから降りて、水中に入ります。
　そこはかなり深く、立ち泳ぎができるほどでした。
　泳いでビニールボートを引張り、猫さん達にビニールボートに乗ってもらいました。
「お願い……できれば、爪は立てないでね？」
　丈夫なボートとはいえ、穴が開いては沈んでしまうかもしれません。

　そうやってしばらく進んでいると、新たな猫たちの姿を見つけました。
「あれ……テオ君にミラちゃんに、猫さん達？」
　ゆらゆら揺れるサーフボードの上で、テオは水嫌いな猫たちにしがみつかれたまま、身動きが取れずにいるようです。
　テオははあ、とため息をついていますが、ミラはなんだか楽しそうに見えました。
『おい、こいつらを何とかしてくれ』
　テオの言葉が頭に響きます。
「何とか助けたいけど……」
　一度に全部乗せるのは難しそうです。
（下手にしがみついてる猫さんを外すと、他の子が暴れて皆落水しちゃいそう……）
　夏朝は懸命に考えました。
「猫さんが飛び移れそうな岸か建物の近くまで、ビニールボートでゆっくりとサーフボード押せないかな」
　波を立てないようゆっくりと、ビニールボートをサーフボードに近づけてみます。
　テオにしがみついていた猫が、ビニールボートに反応し、飛び移る体勢に入りました。
「よし、それなら」
　夏朝はねこシールを取り出し、自分に貼ってろっこんで軽くし、バランスを維持することにしました。
　ぐらり。
　倒れそうなサーフボードに慌てて手を伸ばし支えます。
（これでだめなら、進化能力でねこシール飛ばし、猫さん達軽くして何とか……！）
　どうにかバランスが取れて、夏朝はひとまずほっとしました。
　けれど、サーフボードを岸か建物の近くまで移動させなくてはなりません。
　あたりを見回すと、猫なら通れそうな、岸へ続く手ごろな塀がありました。
「僕が支えておくから、その間に猫さん達は飛び移って」
　怖がっていた猫もいましたが、夏朝とミラに励まされどうにか飛び移ってくれました。

　無事に猫たちを岸に移し終えた夏朝は、ふと思いついてミラに尋ねました。
「ミラちゃんは、テオ君ともう少し乗ってたかったのかな？」
　……だとしたらごめんね、と思った夏朝に、テオはぷいとよそを向き、ミラは言いました。
『お気遣いありがとうございます。十分楽しめましたわ』
「ならいいんだけど……」

　夏朝は再びボートに乗り、困っている猫を探して一日を過ごしました。

「アクアアルタ、今年も楽しかった……来年も起こるかな」
　今からその時を楽しみに思うのでした。

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