ネコジマ・シャンデリア・トレイン｜リアクション

ネコジマ・シャンデリア・トレイン

●光のなかで見た姿

　八神修のところに『ネコジマ・シャンデリア・トレイン』の招待状が届いた。内容は寝子電やその路線上をイルミネーションで演出するイベントらしい。

（ん？　この企画してる会社の名前、見覚えが……）

　少し考えて、先日七夜あおいと一緒に行った『星ヶ丘クリスタルガーデン』を運営していた会社と同じだと気づいた。

（ということは、あおいにも招待状が届いているかもしれない。）

　さっそくあおいに連絡すると、あおいのもとにも招待状が送られているようだ。それなら一緒に行こうと修が誘うと、あおいは快諾した。そして夜になり、２人は寝子島駅に現地集合した。

「あおい、こんばんは」
「こんばんは！　電車、まだ来てないみたいだね」
「そうだな」

　どんな列車が来るのかと待っていると、それは姿を現した。その列車は普段の姿とはまるで違った。電飾の光をまとって、これから別世界へ連れて行ってくれる気さえした。

「まるで銀河鉄道、だな」

　思えば、夜の列車にはなかなか縁がない。素敵な旅の予感を感じながら、あおいと一緒に乗車した。向かい合わせに座れる場所を見つけると、上着を脱いで腰を下ろす。

「いろんなメニューがあるんだね」
「そうだな。あおいはどれがいい？」
「迷うなぁ……」

　メニューをじっと見つめて迷う姿を、修は微笑ましく眺めている。迷った末にチーズリゾットとサラダチキンをシェアするつもりで注文し、あおいはニャンタを、修はにゃごの紅茶を注文する。食後のデザートとフルーツも忘れない。

「終電の後に電車に乗るってなんだか不思議」
「そうだね。そういえば今日は夜更かしするけど大丈夫？」
「うん」

　終電後なので、どうしても遅い時間になる。
　でもその心配はなさそうだと安心したところで、注文した料理が運ばれてまれてくる。チーズリゾットからバターとチーズの匂いが香ってきて食欲をそそる。サラダチキンと一緒に、それを２人でシェアする。

「では、素敵な夜に乾杯」
「乾杯」

　修はそう言ってグラスを掲げると、あおいも同じようにする。そしてカツンと小気味いい音が２人の間に響く。料理はどれも美味しくて、会話も弾む。

「今回のイベント、この前行ったクリスタルガーデンと同じ会社らしい」
「そうなんだ。だからかな？　今回もお洒落だね」
「いいよね、この雰囲気」

　そんな話をするうちにメインの料理を食べ終わり、あとはデザートとフルーツを残すのみ。それを味わうように楽しみながら、夜の寝子島を眺める。

「夜だと、なんだか別の土地に見える。不思議だ」
「今日はすごくキラキラしてるしね」
「そうだな。窓に映る俺たちもちょっと違って見えるかな」
「だったらいいなぁ」

　あおいは、そう言って窓の外に目線を向ける。その表情を見て、修は言葉を続ける。

「……あおいはなんだか大人っぽく見えるよ」
「そ、そう？」
「ああ」

　修は正月のときに寝子島神社に行ったことを思い出す。
　ツインテールに結っていた髪をほどいて、セミロングになった瞬間。あの時もドキッとしたが、今見ているあおいの表情にも同じような感覚を抱いた。

「最近、あおいはぐっと大人っぽくなったと思う」
「そんなことないと思うけど……」
「なってるよ。俺が保証する」
「……ありがとう」

　あおいは少し恥ずかしそうに礼を言った。
　終着駅である星ヶ丘駅に着くまで、２人は色々なことを話して過ごした。

このページにイラストを設定する