ネコジマ・シャンデリア・トレイン｜リアクション

ネコジマ・シャンデリア・トレイン

●まるで夢のよう

　御巫時子と五十嵐尚輝先生は、シャンデリア・トレインに乗るために寝子島駅にやってきた。

「急なお誘いだったのに、来ていただけて嬉しいです」
「いえ、僕も興味ありましたし」

　話は少しさかのぼる。
　時子のもとに『ネコジマ・シャンデリア・トレイン』の招待状が届いた。

（シャンデリア・トレイン……尚輝先生と一緒に乗りたい）

　そう思った彼女は放課後に理科室を訪れると、五十嵐先生にそのことを話す。

「ふむ……シャンデリア・トレインですか」
「はい。すごく綺麗でしょう？」
「そうですね」
「もしよければ、一緒に乗りませんか？」

　五十嵐先生は少し考える素振りを見せたが、時子の提案を受け入れた。雑談しながら待ち合わせの場所や時間などを決めると、時子はいったん家に戻り、出かける準備を整えた。
　それから時間が流れ、今に至る。

　寝子島駅やその周囲は普段の印象とまるで違っていた。路線上には電飾を施したオブジェが並べられている。動物や食べ物以外にも、サンマさんやマンボウくんのオブジェもあって、そのどれもが光を放って、特別な雰囲気を生み出している。

「尚輝先生。列車が来るの、楽しみですね」
「そうですね。列車もこんな風に光っているのでしょうか」
「もしかすると、そうかもしれません」

　そんなことを話していると、イベント仕様の寝子電がやってきた。
　イルミネーションで飾られて、オブジェで彩られた光の中を走っている。

「すごい……」

　２人の感想は一致していた。
　列車が寝子島駅に停車すると、２人はそれに乗る。そして窓際に向かい合うように座ると、そこから外を眺める。列車の外から見たときとは、また違った光を感じる。照明の落とされた車内にも電飾が灯されて、まるでプラネタリウムのようだった。

「なんだか、別世界に来た気分です」
「わかる気がします」

　尚輝先生も窓の外や車内の様子に感心している。すると列車が走り出し、光のなかを進む。時子は乗務員に招待状を提示して、にゃごの紅茶とチーズリゾットを注文する。

「尚輝先生は何にしますか？」
「僕はコーヒーをいただきます」

　注文した料理が２人のもとに運ばれてくる。
　それらを口にしながら、窓から見える景色に目を向ける。

「綺麗な景色を見ながらの食事もいいものですね」
「こんな風に食べることも珍しいですしね」
「あ、尚輝先生。ペンギンがいますよ」
「本当ですね。あっちのは白鳥でしょうか」

　輝くオブジェと光の演出に、思わず食事の手も止まりそうになる。新しいオブジェを見つけるたびに尚輝先生も興味深く眺めている。動物や花など、色々な種類のイルミネーションが続くので飽きない。

「尚輝先生、綺麗ですね……」
「ええ、本当に」
「このイルミネーションの中に幸せの青い鳥を見つけられたら幸運が訪れそうですね」
「それは素敵ですね」

　まるで夢を見ているような時間だった。やがて列車は星ヶ丘駅に到着し、２人は列車を降りた。

「尚輝先生、今日はありがとうございました」
「こちらこそ、ありがとうございました」

　帰り道、駅から離れるにつれてだんだんと夢から覚めるようだった。

（でも尚輝先生と素敵な時間を過ごせて嬉しかったです）

　それでもこの夢は、きっと忘れない。

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