ウィンター☆ 部活動のお時間です！～運動部編～｜リアクション

ウィンター☆ 部活動のお時間です！～運動部編～

　寝子島高校女子バスケットボール部の部員は木天蓼市内を黙々と歩く。雪の一部が道端に残っていた。誰も興味を示さず、思い詰めたような顔で口を引き結ぶ。
　羽生碧南が先頭に立って部員を率いる。新しくキャプテンに選ばれたこともあり、すでに戦う女の顔になっていた。
　進行方向に正門が見える。木天蓼女学院のプレートを目にした碧南は声を上げた。
「今日の練習試合の相手は関東大会を優勝した強豪校だけど、胸を借りるつもりはないわ！　やるからには勝ちに行くよ！」
　部員達は声を揃えて、はい、と大きな声を返した。
　一同は正門を通って体育館を目指す。全員、顔を上げた。戦う女の顔へと変わっていった。

　体育館は活気に満ちていた。試合形式の練習が始められ、熱い攻防を繰り広げている。コートの外にいた部員は試合並みの応援を送った。
　一人の選手が相手からボールを奪い、鋭いドリブルでゴール下に駆け込む。待ち構えていたディフェンスは横に動くステップで躱し、レイアップシュートを決めた。
　特にアピールをすることなく、その人物は碧南のところに歩いてきた。
「今日の練習試合、お互いに良いプレーをしましょう」
　逢坂和葉は手を差し出す。
「新しいキャプテン同士で、今年初めての練習試合よ。ファインプレーが出ないはずがないわ」
　碧南は手を握り、熱い握手を交わした。キャプテンの意気込みは部員達にも伝わった。
　両チームは試合前に軽いストレッチを行う。各キャプテンは最後の指示を出して円陣を組み、鼓舞する声を上げた。
　コートに両チームが入る。最初のジャンプボールで早々と二人のキャプテンが激突する。
　二人は勝ち気な顔で向き合う。審判役がボールを垂直に上げた。その到達点を見極め、共に跳んだ。
　和葉がボールを指先で弾いた。味方に渡り、指示のない中で速攻を仕掛ける。
「ディフェンス！」
　叫んで碧南は走り出す。敵は低い姿勢のドリブルでフリースローラインを超えた。ゴール下にいたディフェンスが勢いに釣られて前に出た。
　瞬間、敵は斜め後ろに高速パスをした。受け取った和葉はスリーポイントを放つ。
　リングの中央を捉え、音もなく先制点を入れた。
　悔しがる間もなく、碧南は声を出した。
「落ち着いて！　回していくよ！」
　碧南を中心にしてパスを回す。敵のディフェンスは定位置で守り、時に前に踏み出した。
　時間が過ぎていく。碧南は横目で審判を窺うとストップウォッチを見ていた。
「連携！」
　鋭い言葉で碧南がフリースローラインを踏み越えた。味方からパスを受けると眼前に敵が迫る。即座に横手に返して味方がジャンプシュートを試みた。
　リングの内側に当たって入った。
　コート外で待機していた部員が歓喜の声を上げた。
「この調子よ！」
　碧南は一際、大きな声を出した。味方は揃って、はい、と即答した。
　その後の両チームは集中力が途切れることなく果敢にコートを駆け回った。第一ピリオドは敵が三点差で競り勝った。
　第二ピリオドは碧南の指示がコートを飛び交う。日頃の練習もあって連携が見事に決まった。焦りが敵のファールを呼び込み、フリースローで得点を重ねた。結果、一点差に詰め寄る。
　第三ピリオドは敵が巻き返す。冷静さを取り戻し、和葉の活躍もあって三点差と広げた。
　第四ピリオド、あとが無くなった碧南は最初から飛ばした。スタミナ配分を無視して果敢にゴールを狙う。マンツーマンディフェンスで和葉に防がれることもあったが、最後の三ポイントシュートを入れて同点とした。
　そして運命の延長戦、五分が始まった。
　両チームの動きは鈍い。床には汗が滴り、足を滑らせる者もいた。
　その中、碧南と和葉がボールを奪い合う。パスを回しても必ず、二人は最後にぶつかった。
「抜かせない！」
「絶対に抜く！」
　碧南はドリブルで敵陣に突っ込む。正面に和葉の姿があった。右には味方が一緒に走る。それでいてパスのタイミングを逃した。いや、敢えてしなかった。
「キャプテンの私が！」
「キャプテンの私が！」
　どちらも同じ言葉を発し、ディフェンスとオフェンスの意地を見せる。
　碧南はボールをスティールされないように背中で押し込む。和葉は長い手を使って牽制する。
「これなら！」
　碧南は味方に視線を飛ばし、その逆に走り出す。が、和葉は表情を歪ませて食らい付く。
　その時、ドリブルの手を入れ替えた。クロスオーバーで更に逆を突いてジャンプシュートに持ち込んだ。
　体育館が揺れる程の歓声が沸き起こる。試合終了のホイッスルが鳴った。
　今年最初の練習試合。碧南が率いる寝子島高校女子バスケットボール部の勝利となった。

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あとがき

担当マスター：黒羽カラス
ファンレターはマスターページから！

　冬の部活動が無事に終わりました。
　悪魔の襲来でどうなることかと思いましたが、
　日頃から鍛えられた運動部の結束力でどうにかなりました。
　悪魔ではありますが、悪魔らしくない者もいました。
　かと思えば人間でありながら悪魔的な行動で、悪魔に称賛される場面も。
　他校に出向いて練習試合をした部もありました。その白熱の試合に悪魔も手が出せなかったようです。

　最後になりました。ご参加、ありがとうございました。
　また新しいシナリオで会いましょう。

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