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冬と、蜜柑と、『somnium』。
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●昼間
これからどうしようかな、と思いがけず出来た時間に思いを巡らせた。
画材を買いにシーサイドタウンまでやって来たものの、もっと手間取るかと思っていた買い物は、
小山内 海
が考えていたより随分と早く終わってしまった。たまたまお目当ての画材がセール中だったおかげで、あちこち探し回らずに済んだのだ。
ラッキーだったな、と内心で呟く。おかげで予算よりぐっと安く買えたし、そういう意味でも今日はついていた。
だから。
(んー……どこかでゆっくりしようかな)
こんな日にこのまま真っ直ぐ寮に帰るのも、何とはなしに味気ない。せっかくだからどこかないかなと、きょろ、と辺りを見回せば、ふと目に飛び込んできたのはこじんまりとした、どこか懐かしさも感じられるお店。
それは店そのものが持つ雰囲気もあるだろうけれど、それだけではないと、看板に綴られた店名を見た海はすぐに思い出した。
(『somnium』……そういえば前に何度か来たことあったっけ)
確かケーキとか美味しかったし、可愛い雑貨とかも置いてた、ような気がする。ぽっかり空いた自由時間を過ごすのに、悪くはない場所かも知れない――うん、せっかくだし寄っていこう。
こく、と小さく1つ頷いて、海は入口へと足を向けた。からん、と古風なベルを頭上に聞きながら、店内に足を踏み入れるとまず目に飛び込んでくるのは、スイーツの並んだガラスのショーケース。
そこに在った、いかにも手作りなPOPに視線を向けて、へー、と目を丸くした。どうやら今日は蜜柑デーらしく、言われてみれば確かに並んでいるスイーツは、ぐっと蜜柑に寄っている。
ならせっかくだしその系統で頼んじゃおうかな、と海は幾つか眺めて、蜜柑ケーキと蜜柑ジュースのセットを注文した。そうして空いていた席に腰を落ち着けて、注文したものが来るまで軽く店内をスケッチしようと、スケッチブックと鉛筆を取り出す。
しゃっしゃっしゃっ、と鉛筆の削れる心地良い音とともに、真っ白な紙面に浮かび上がる景色。場面。海の手によって切り取り描かれる、幾つものスケッチ。
(やっぱりこのお店の雰囲気いいなぁ)
久々の雰囲気をしみじみ噛み締めながら、幾つものスケッチを重ねていたら、お待ちどおさま、と伊都子さんが注文のセットを持ってきてくれた。ごゆっくりね、と微笑んで去っていく彼女を見送って、さて、と目の前のスイーツに向き直り。
わっ、と顔を綻ばせた。
(美味しそう! それに、見た目も可愛い)
せっかくだから写真撮っちゃお、と手早く撮影して「いただきます」と手を合わせた。まず食べるのは、もちろんこの可愛くて美味しそうな蜜柑ケーキから。
はぐ、とフォークで口に運べば、甘酸っぱい蜜柑の味とクリームの優しさが、いっぱいに広がった。つられるように2口、3口と口に運んで、美味しいなぁ、とその味わいを噛み締める。
来て良かったな、とほっこりした。ゆっくり味わって食べようと思う――スイーツも、このお店の雰囲気も。
そんな風に色んなものを味わって、食べ終えた海はせっかくだから、雑貨の方も見に行く事にした。味わうなら最後まで、と雑貨コーナーに足を踏み入れる。
前に来た時も思ったのだが、ここの雑貨は何となく全体的に、かわいいのが多いようだ。仕入れは伊都子さんが主に担当しているというから、伊都子さんと海の好みが近いのかも知れない。
そんな事を思いながら並んだ雑貨を見て回っていたら、気になるデザインの手帳を見つけて、あ、と思わず手に取った。
(この手帳すっごくいい)
ちら、と値札も見てみれば、こちらは残念ながら少々可愛くないお値段だ――けれど、このデザインでこの品質でこの値段なら、決して高くはない。それに幸い、お財布の中身には例の画材セールのおかげで、余裕もある。
せっかくだから買っていこうかな、と頷いてレジへと向かう海の耳に、からん、と来客を知らせるベルが響いた。ちら、と何とはなしに向けた視線の先では、
仙藤 紫
がきょろ、と確かめるように店内を見回していて。
約半年ぶりだけど、店のたたずまいは変わってないな、と考える紫である。
あっという間に終わった冬休みの名残を惜しむ間もなく、始まった大学の授業も今日は3限で終わった。この後はバイトの予定もないし、時間的にも余裕があるけど、どうしようかな――と考えてふと思い出したのが、この『somnium』の事。
ここ最近行ってないな、と気が付いてしまったら、足が自然と『somnium』へと向かっていた。そうして導かれるように辿り着いたこの店は、良い意味で時の流れを感じさせなくて――良いな、と思う。
お会計中の伊都子さんの手が空くのを待っていたら、ちょうど高明さんも出てきたから、2人に「ご無沙汰しています」と挨拶した。
「やあ、よく来たね」
「あらあら、すっかり素敵なお嬢さんになられて」
「そんな。お2人こそ、お元気そうで何よりです」
それに、まるで親戚に対するような言葉をにこにこ紡ぐ店主夫婦もまた、店と同じで時の流れを感じさせない。それにしみじみしていたら、今日は蜜柑デーなのよ、と伊都子さんが嬉しそうに教えてくれた。
見ればその言葉の通り、ガラスのショーケースにも焼き菓子の棚にも、イートインのドリンクメニューにも蜜柑が溢れている。それなら、と蜜柑ケーキと蜜柑ティーを注文し。
「何かあったんですか?」
ふと、伊都子さんに問いかけた。店主夫妻、主にはスイーツ担当の高明さんの仕入れ次第でその日の品揃えが決まるというこの店で、こういった『○○デー』は珍しいことじゃないらしいと聞いているけれど、蜜柑の特売でもあったのだろうか。
そう、尋ねた紫に伊都子さんが、うふふ、と柔らかく微笑んだ。そうして語った所によれば、以前にも話しを聞いたことのある孫娘が実家に帰省した際に、山ほどの蜜柑を土産に戻ってきたのだとか。
なるほど、と頷いた。
確かに女子高生と老夫婦では処理出来ないかもしれない。蜜柑は常温保存だと案外足も速いし、まして数箱となると最早、一般家庭で処理出来るレベルも超えているのでは。
そんな事を考えながら暫く夫妻と近況を話していたら、店の奥からひょこ、と女の子が顔を出した。年頃は多分、紫の1つ2つ下か――ということは。
「この子がお孫さんですか?」
「えっ、はい! お孫さんです!」
木原夫妻に尋ねた紫の言葉に、けれども応えたのは当の孫娘、理子の方だった。突然話題に上がって驚きながらも、こういった声かけも多いのだろうか、返答はスムーズだ。
ふうん、と紫は失礼にならない程度に、理子をじっくり観察した。噂にだけは聞いたことがあるけれど、実は紫自身は会った事がない『謎の』孫娘は、こうして現に会ってみるとどこか仔犬っぽい――否、仔リスっぽい……?
いや仔リスって何だ、と自分で自分に突っ込みながら、紫は理子に自己紹介をした。
「初めまして。私は
仙藤 紫
よ。寝子校の卒業生。――ねぇ、せっかくだから一緒に話さない?」
「えっ、えっ、はい!」
人見知りしないタイプなのか、紫の誘いに理子は嬉しそうに大きく頷く。そうしてから、はっ、と我に返って祖父母の方を窺う様子は、やっぱり仔犬属性だろうか。
何だかおもしろい娘だな、と思いながら紫は理子がケーキを選ぶのを待ち、同じテーブルに腰掛けた。そうして、今の寝子校の話を聞いたり、逆に紫が在学当時のエピソードを話して聞かせたり、学校生活のコツなんかを教えたり――色々な話をする。
その後は、何となく雑貨コーナーへと足を向けた。何かあるかな、と雑貨を適当に見て回っていたら、可愛らしい仔犬のクリップを見つけて何となく手に取ってしまう。
クリップ全体が仔犬の形をしたフォルムが、何となく可愛く感じられて、せっかくだから買って行くことにした。あとは妹へのお土産に、持ち帰りしやすい蜜柑の焼き菓子も。
(今度は妹も連れて来ようかしらね)
その時も理子が居たら面白そうだと、内心ほくそえみながら紫が帰って行った後も、『somnium』には幾人かのお客様が訪れて。彼女がそんな客の1人として訪れたのは夕方、冬のこの時期では辺りもすっかり暗くなってしまった頃合いだった。
今日の仕事を終えた彼女、
志鷹 若菜
が、足を向けた心温まる大好きな場所。今や常連となった『somnium』の店内を客席側の窓からそっと覗いたら、そろそろ客足も遠のき始めた頃合いなのだろう、店内には1人、2人の姿が見えるのみ。
それを確かめてから表の入口へと回った若菜は、からん、と扉を押し開けた。
「お久しぶりです」
そう挨拶したのは、暫く多忙で来れずに居たから。そんな若菜に伊都子さんが、いらっしゃい、といつもの様に微笑んだ。
その、心が温かくなるような笑顔を見、心から嬉しくなって若菜も微笑む。まずは軽食とレモンティー、蜜柑のタルトを注文して、お好きな席へどうぞ、と促された若菜が足を向けるのは、いつもの席。
そうしていつもならそのまま、注文が来るのを待ちながら本を読んだり、物思いにふけって過ごすのだが――あの、と若菜は伊都子さんに慎重に――見ようによっては恐る恐る、問いかけた。
「……今日はお二人に相談したいことがあるのですが、よろしいでしょうか……?」
そんな若菜の言葉に、あら、とほんの少し驚いたような顔をした伊都子さんは、だがすぐに微笑んで「少し待ってらしてね」とその場を離れた。それから戻ってきた彼女が手にしていたトレイには、若菜の注文したものと、丁寧に使い込まれた風情の木彫りのマグカップ。
それを手に若菜の前に「お邪魔するわね」と腰かけて、伊都子さんが微笑んだ。微笑んで、無言のまま話を促された。
代わりに高明さんがホール側に出てきたのも見えて、ぺこ、と若菜は小さく頭を下げる。そうして、少し目を閉じて――どこからどう話したものか、思いあぐねて。
「――ずっと考えていたんです」
紡ぎ出した言葉は何故だか、懺悔の響きにも似ている気がした。そんなつもりも、気持ちもないはずなのに。
そう、若菜はずっと、ずっと考えていたのだ。弟の心を蝕んでいるものはいったい何なのか。何が、あれほどに弟の――彼の心を――?
その答えの一片を、けれども実は若菜は見つけているような気もしている。あれはつい先日のこと、洗濯物を彼の部屋に置きに行った時に、今まで大切に飾っていた写真や贈りものが全て片付けられていたのを見たのだ。
それはまるで、『彼女』の記憶を封じるように。『彼女』との思い出から目を逸らすように。
「だから、彼は心の傷が癒えぬまま、前へ進もうと独り、足掻いているのではないか……って」
過去に無理やり蓋をして、自分自身の目を塞いで、見えなくして。そうやって自分自身にすら嘘をついて、誤魔化して――そうやって、前に進もうと。
それは1つの解決策なのかもしれないが、あまり良いことだと若菜には思えなかった。彼の心の傷はそんなに、性急に進んで自然と癒えていくような、そんなものではないと感じていたからだ。
もっと、もっとゆっくりで良いのに、と思う。父も母も、結婚を急かすような人ではない。だから伝えたい――もっとゆっくりでいいよ、そんなにがんばらなくていいよって――
(……でも、いつ、どうやって?)
ただでさえ多忙な救急医として、まるで自分を追い込むように忙しくする弟と、同じく小児科医として多忙な若菜には、ゆっくり話すだけの時間がない。例えオフが重なったとしても、それほどにプライベートに踏み込んだ話の出来るタイミングは、そう簡単には訪れてくれない。
故に彼の心を案じながらも、もどかしい日々を若菜はもう、ここしばらくずっと過ごしているのだった。
「ある女の子は、心を開いて彼を信じることが大事だと、助言してくれましたけれど……」
「そうねぇ……」
ふぅ、とため息を吐いた若菜に、伊都子さんも小さな、だが思いやりと暖かさに満ちた息を吐いた。難しいわよねぇ、と呟いた眼差しは、吐息と同じく温かな思いやりに満ちている。
しばし、沈黙が流れた。それを不思議と居心地よく感じながら静けさを守っていたら、私ならですけれど、と伊都子さんが呟いた。
「私なら――そうねぇ、信じるというのは大切な事よね。そして、とても難しい事ですよ。ええ、とっても難しい――」
「……」
「信じて待つ事と、ただ何もしない事は違うでしょう。そして、信じてくれる人が居るからこそ無理も出来る時もあるし、信じてくれる人のために無理をしなければいけない時もある――ええ、本当に、誰かを信じるというのはとても難しい事ね――」
それは謎かけのようにも、独白のようにも響く言葉で、若菜は少し目を瞬かせて真意を問いかけるような視線を向けた。だが伊都子さんは微笑んで、私ならですよ、とお話を仕舞いにしてしまう。
彼女にとっては、それが若菜への答えなのだろう。そうと悟って若菜は、お話を聞いて下さってありがとうございました、と小さく頭を下げた。
彼には内緒にして下さいねと、同じく常連らしい――らしい、というのはこの店で顔を合わせる事もほぼないからだが――弟への配慮を頼めば、もちろんですよ、と真面目な顔になる。それにほっと安堵して、若菜は手付かずだった軽食をゆっくりと味わって。
お会計のついでに、弟と妹へお土産にスフレを購入した。それから、そうだ、と悩ましい日々の中で数少ない嬉しい事を思い出し、伊都子さんに報告する。
「彼、今度お友達と来るみたいです」
「あら、それは楽しみね。ぜひお待ちしているわ」
若菜の言葉に、嬉しそうに伊都子さんが手を合わせて微笑む。けれどもきっと、いつ来たかなんてこの女性は若菜自身にすら教えたりはしないのだと、何故だか信じられて軽く頭を下げ、若菜は店を後にしたのだった。
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担当ゲームマスター
蓮華・水無月
シナリオタイプ(らっポ)
ブロンズシナリオ(100)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
10人
参加キャラクター数
7人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2020年07月11日
参加申し込みの期限
2020年07月18日 11時00分
アクション投稿の期限
2020年07月18日 11時00分
参加キャラクター一覧
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