風邪引きました｜リアクション

風邪引きました

とある日、深林真瞭は目を開けた。悪夢でも見たのか、疲労感がある。身体を起こそうとして気づいた。
怠い、寒気もする。喉も痛いじ、声を出すのも苦痛。
「……風邪をひいちゃったな」
誤魔化しようもなく、熱を測ったら３８・４度だ。
なんとか体を起こした真瞭は体を引きずりながら、キッチンへ行き風邪薬の箱を手にする。
「一回、一包……あ、何か食べないと」
空腹時は避けて下さい、と説明書にある。
と、スマホが鳴った。
『まーちゃん何してる？』
「りさちん……」

深倉理紗子はシャワーを浴びながら欠伸をした。今日は非番で昼間で寝ていたのにまだ眠気が強い。日頃の疲れが出ているのか、もしくは寝すぎたのか。
　充分に温まったところで、体を拭いて、スマホを手に取った。頭に浮かんだのは真瞭の顔だ。
　特に用事があるわけではないがメッセージを送ってみよう。
しばらく待っていたが返信がなかったので、シーサイドタウンに買い物に出ることに。
『かぜひいちゃった、くすりのんでねるかも……。食べた方がいいかな？』
　読み取れたのはそこだけで、最後の方は文章が滅茶苦茶である。
『胃に負担がかかるから、食べた方がいいわよ』
　余計に具合が悪くなってしまうかもしれない。
『今、家に何もなくて』
『なら寝てて待ってて』
　理紗子は近くのスーパーへ走った。

真瞭はふらふらになりながらベッドへ戻った。
「はあ……」
　理紗子が来てくれるらしいので、少し待つことにした。
　そうこうしているうち、だるさと疲労感で眠りに落ちてしまった。

　エントランスのセキュリティを解除してもらった理紗子は真瞭の部屋まで行き、インターホンを押した。
「はい」
　ドアを開けて出て来た真瞭は少し顔が赤かった。熱のせいで頭がぼんやりしているのだろう。
「遅くなってごめん、すぐ用意するから寝てて」
「んー……」
　ベッドまで連れて行く。彼女を寝かせて、キッチンへ行き氷枕を用意した。
「はい、頭上げて」
　氷枕を頭の下に入れる。
「冷たい……気持ちいい」
　熱が高そうなので、これで少し落ち着くだろうか。
「何かほしいものない？　今からご飯は作るけど」
「喉が渇いたかな」
　先ほど水は飲んだが、熱があるせいか水分が欲しい。
「スポーツドリンクでいい？」
理紗子はペットボトルの蓋を開けてストローを指した。
「はい」
「ありがとう」
　それを受け取って、横になったままストローをくわえる。
　冷たいスポーツドリンクが喉を通ると、火照った体が少し楽になる。
　理紗子はキッチンへ戻っていった。
「ん……」
　少ししか寝ていないのに汗びっしょりだった。
「どうしよう」
　ご飯は理紗子に甘えるとして、着替えてしまった方が良さそうだ。そうしたらもう一度ベッドに入ろう。

「まーちゃん」
　名前を呼ばれた気がして目を開ける。
「良かった。大丈夫？」
覗き込んできたのは理紗子だった。
「あ、りさちん」
「体起こせる？」
　支えられながら、ゆっくりと体を起こす。
「食事用意したから、こっちへ持ってこようか？」
　眠ったせいか、少しだけ体が軽い。そして、お腹が減った。
「ううん。食べづらいからそっちに行く」
理紗子が作ったのはにゅう麺にトマト、牛肉、レタスを合わせて煮て、大根おろしを添えたもの、テーブルに並んで二人で食べる。
「頂きます。……あ、美味しい」
お腹がいっぱいになったところで薬をしっかり飲み、医者の理紗子に診てもらう。
「典型的な風邪。このまま大人しく寝ていれば大丈夫」
「……ありがとう。来てくれて」
「ええ」
　理紗子は真瞭が眠るまでベッドのそばにいて、寝息を立て始めたところで立ち上がった。
「帰るわね」
夜９時まで看病をして、帰宅。明日も仕事なのだ。

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