フシギなフシギな授業参観日｜リアクション

フシギなフシギな授業参観日

●すごく張り切る授業参観

　いきなりな授業参観は寝子高だけでなく、寝子島小学校でも行われていた。

「なぬー！？　授業参観ッス！？　ゲリラ参観日！　そういうのもあるのかッス！」
　担任が唐突に告げた授業参観日のお知らせに、声を大にして驚く古尾桐子。
　急にそんなこと言われて来る親がいるッスか？　と思っていたが……。
　教室の後ろの扉が開き、続々と保護者が入ってきた。
　クラスメイトのお父さんかお母さんだったり、動物だったり、妖怪といった人外だったり。
　教室が動物園かビックリ博覧会かと思う場となったので、どうなっているのかと驚く生徒もいた。
　普通じゃないッス……と思いつつ桐子は後ろをチラリと見ると、保護者の中に父親がいた。

　

　無精ひげ、よれよれのスーツ姿とくたびれている様子の外見だったが、桐子は父親が来てくれたことがすごく嬉しかった。
　ウィンクをして「来たぞ」と言っているような合図をしている。
　仕事はどうしたんッス？　サボリッスか？　といろいろ聞きたかったが、経緯はどうあれ来てくれたことに感謝した。
（んんんー！　とーちゃんもきてるみてーッスね。こりゃいいとこ見せれるようにがんばらねーとッス！）

　授業参観で行われた授業は社会科。
　今日は食糧生産の勉強をしますという担任の言葉は、とーちゃんにいいところを見せるッスと意気込む桐子には聞こえていなかった。
　いいところを見せるべく、桐子は「はいはいはーい！」と元気良く手を上げる。
「せんせー！　ウチが答えるッス！　答えはコロンビアッス！」
　教室に響くような大きな声で、はっきりと答える。
　元気なのはいいことですが、問題は最後までちゃんと聞き、ちゃんと考えて答えましょうという担任の一言に恥ずかしくなった。
「うおー！　間違いだったッス！　はずかしーッス！」
　問題を間違えたことより、父親にこんなところを見られたことが恥ずかしかった。
（とーちゃん、呆れてないッスよね？）
　と不安にもなったが、ここは次の問題で汚名挽回ッス！　と、気を取り直して張り切る。
　それを見て、父親は「あいつらしいな」と言いつつ苦笑し、頭を掻いた。
　今度は問題をちゃんと聞き、ちゃんと考えてから答えることにした。
「はいはいはいはいはいはいはいはいはーーーーい！」
　怒涛の挙手ラッシュに担任だけでなく、クラスメイトと保護者達は驚いていた。
　そんな中、桐子の父親は次は頑張れよ、という表情をしながら授業を見ている。
　その後も、怒涛の挙手ラッシュを続けて問題を答えたりと大張り切りの桐子だった。
（ふぅー、これだけ答えたらきっととーちゃんにいいとこ見せれたはずッス！）
　授業中、後ろを時折チラ見しながら父親の様子を窺う。

　授業参観が終わると、保護者達は教室を後にした。
　桐子は立ち去ろうとする父親を追いかけ、腕を掴んで引き止めた。
「とーちゃーん！　ウチのいいとこバッチリみてたッス？！」
　相変わらず元気いいな、とか、張り切って答えていたなと父親は褒めながら桐子の頭を撫でた。
「やったー！　褒められたッスー！　嬉しいッス！」
　来てくれただけでも嬉しいが、褒められたことはもっと嬉しかった。
「とーちゃんとーちゃん！　ウチがんばったから今日の晩御飯はハンバーグが食べたいッス！　デミグラスなやつ食べたいッス！」
　そうだな……と少し考えてから、父親はすごく頑張ったご褒美に晩御飯はハンバーグにするかと笑いながら言った。
「やったッス！　ハンバーーーーグ！」
　両手を挙げて大喜びする桐子を見て、我が子の喜ぶ姿を見て嬉しくなり、授業参観に来て良かったと思う父親だった。

　その日の晩御飯は、父親と一緒にファミレスで食べた。注文したのはハンバーグセットだ。
「デミグラスなハンバーグ、美味しいッス！　最高ッス！」
　満面の笑みで美味しそうに食べる娘を見て、父親も美味しそうな顔でハンバーグを食べた。

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