フシギなフシギな授業参観日｜リアクション

フシギなフシギな授業参観日

●唐突に始まった授業参観

　寝子高では、担任から唐突に告げられた授業参観日開催に生徒達がざわめいた。
　えー！　と驚く生徒もいれば、保護者は誰が来るんだろうと楽しみにしている生徒もいる。
「授業参観って、これじゃ授業中も寝れないなあ……」
　いつもなら眠気堪えて授業を受けている万条幸次だが、担任の早川珪先生の「授業参観日なんだよ」という一言で眠気が吹っ飛んでしまった。
　それだけならまだしも、２年３組の授業参観に来た保護者達の中にいた幸次の保護者を見て更に吹っ飛んだ。
（か、花遊が保護者だって！？）

　

　一緒にいるのは飼い猫の花遊（かゆう）が神魂の影響とかで人の姿でいても驚かなくなってきたが、保護者として来たのには驚いた。
「あれ、自慢の弟なんだー」
　と誇らしそうに保護者達に喋っているのでてめちゃくちゃ鬱陶しいし、恥ずかしい。
　お母さんの中には、面白くてイケメンなお兄さんと思っている人もいる。
（花遊、それ以上、何も言わないで……！）
　親猫とはぐれて保護した子猫の時から知っているが、なぜ幸次は弟になるのだろう。
　幸次は花遊を弟のように思っているが、花遊は自分が兄貴分と思っているようだ。
　花遊は猫年齢で２歳、人間年齢で２３歳くらいなので人間化した時の外見は幸次より年上である。
　好奇心旺盛、軽い、お喋り好きな陽気なお兄さん、と保護者達に思われてもまったく不思議ではない。
　なので弟と言われても違和感がないが、幸次としてはしっくりこない。
「人間化した花遊はともかく、何で動物とかがいるんだろうねえ……」
　二足で立っている白クマとかもいるので、人間化した花遊がいてもおかしくないかと割り切ることにした。

「万条君はお兄さんが来ているのか」
　保護者達をチラリと見る鴻上彰尋は突然の授業参観だけど、自分のところには誰か来ることが出来るんだろうかと思った。
　母も兄も仕事で忙しいだろうから、こんな突然ならあまり期待はできないかもしれない。
　見に来てほしいなと心で思いながら、少しそわそわしつつ授業を受けることに。
　幸次が恥ずかしい思いをしている間、彰尋はそっと後ろを確認するが見知った顔は見当たらない。
　けれど、なぜかよく目が合う女の人がいる。
　綺麗な黒髪をきっちりと結って、スーツも決まっていて眼鏡をかけている人。
　気まずそうにお互い目はそらすけど、なんとなく見覚えがある。
（誰かのお母さんだろう。クラスの誰かを見ているのかな）
　母の鴻上千陽（こうがみ　ちあき）は実の母親で海外在住、職業は舞台女優。
　自由奔放、あけすけで演技に情熱を注いでいるが実は寂しがり屋でプライドが高く、人前に姿を出さない。
　彰尋は会いたがって手紙を書くが、日常会話の英文ではぐらかされている状況である。
　授業参観に来ているのであれば、彰尋と出会うのは初めてだが育ての親より写真で姿を知っている。
　写真で知っている母親の姿が無いので、授業参観に来ていないのだろう。
　もう一度チラリと後ろを見て保護者達を確認したが、来ていないようだったので少し寂しい気持ちに。

　１年４組でも、伊東大志先生から唐突に告げられた授業参観日のお知らせに教室がざわついた。
「急に授業参観！？」
　雨崎楓香は、そんな状況でも真面目に授業受けることに。
　唐突だから誰も来ないからと思い、授業が終わるまでは後ろを振り返らない。
　小学校の時は授業参観といえばおかあさんが必ず来てくれて、授業が終わった後、たくさん褒めてくれて嬉しかった。
（おかあさん、小学校の妹たちの授業参観でも出てるのかしら～）
　小学６年の雪奈と小学４年の曳奈も同じ状況なのかな？　と、ふと思った。

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