妖精の三兄弟｜リアクション

妖精の三兄弟

「へぇ、要求をしてくる妖精かぁ。面白そう」

　響タルトがねこったーでタイムラインを見ていると、最近寝子島で出没するらしい妖精の話が目に入った。
　ねこったーで色々と辿ってみればどうやら妖精は全部で三体いるようだ。そして、彼等は人間に要求をしてくるのだがその内容がそれぞれ違うらしい。
　食事を要求してくる赤い帽子の妖精とはタルトは少し合わないだろうが、他の二人ならば上手くやれそうではある。

「青でも黄でも良いから寄ってきてくれないかなぁ」

　と、そんな事を呟いていたら、用事で出かけた時に青い帽子の妖精が本当に寄って来たのだ。

「おい。僕に良い景色を見せろ！」
「うん、良いよ！」
「何、本当か！　じゃあ、早く見せろ！」
「じゃあ、ちょっと移動しようか。ここだとその良い景色は見れないからねぇ」

　まさか本当に寄って来るなんて、とはタルトは思っていない。寧ろ、本当に寄って来ても問題ないようにしていたのだ。
　良い景色を見れる為のスポットに移動するまでの間、タルトは持論を青い帽子の妖精に聞かせる。

「良い景色と言ったら美少年がいちゃいちゃする景色でしょ。僕のおすすめスポットを特別に教えちゃうから期待しててよ！」
「良く分からないけど、良い景色であるなら問題はないぞ！」

　普通良い景色と言えば自然が溢れる景色とか夜景とかを挙げる人が一般的ではないだろうか。少なくとも美少年がイチャイチャするところを挙げる人はけして多くない筈だ。しかし、タルトからすればそれこそが至高。それこそが最高なのだ。

「おい、まだなのか？」
「焦らない焦らない、僕だって早く見たいのを我慢してるんだから」
「僕はさっさと見たいんだよ！」
「もう少しで着くからさ。あ、それと僕を濡らしたら猫になって会話ができなくなるから止めてね？　良い景色、見れなくなっちゃうよ？」
「ぬぐぐぐぐぐ」

　まだ良い景色も見れず、さりとて悪戯もできずに青い帽子の妖精はフラストレーションを溜めているようだ。
　だが、それが爆発する前にタルトは先手を取った。

「ほら、着いたよ」
「何だここ？」
「中学校のグラウンドだよ」

　そう。タルトが手で指し示したのは寝子島にある中学校のグラウンドであった。まだ部活が終わる時間ではない為、グラウンドでは青春に汗を流している中学生達が部活に勤しんでいる。

「ほら、青少年達が綺麗な汗を流している姿、良いと思わない？」
「うーむ……」
「ん、つまらない？　じゃあ、ただそこにいる彼等を見るんじゃなくてもう少し内面までちゃんと見ようか」
「内面？」
「そう。ほら、あそこの野球部の子達の中で隅に二人でいる子達、分かる？」

　タルトが指差したのは二人で何かをしている男子だ。良く見てみると片方の男子は投球のフォームを繰り返しており、もう一人がそれをチェックするように直ぐ横で見ている。恐らくは投球フォームのチェックをしているのではないだろうか。

「あの二人はね。ポジションはピッチャーとキャッチャーなんだ。小学生の頃から結構注目されててずっと二人でバッテリーを組んでいるんだよ」
「ふーん」
「ほら、見てみて。あんな風に密着しそうな程の距離まで近づいて片方の子が腕を触ってる。あの距離で接する事ができるほど互いを自然に信頼しているんだよ！」
「う、うん？」

　良いね良いね！　と、凄く興奮しているタルト。その様子に青い帽子の妖精はどことなく引き気味だ。
　一応説明をしておけば、ピッチャーとキャッチャーの二人は純粋に投球フォームをチェックしているだけで、所謂BL的な雰囲気が出ているわけではない。

「くぅ～。本当は写真撮りたいけど不審者扱いされちゃうから、目に焼き付けて我慢だ」
「不審者扱いじゃなくて実際不審者じゃ……？」

　思わずツッコンでしまう妖精。しかし、野球部に夢中になっているタルトの耳には入っていないようだ。

「あ、ショタ好みなら小学校もお勧めだよ！　中学生以上に密着が楽しめるよ！　何せ小学生だとまだまだ距離感なんて何それ、美味しいの？　って子が多いからね！」
「別に僕はショタ好きじゃないけど」
「そうだ、見てるだけじゃなく君たちも混ざって遊んでくればいいんじゃない？　いちゃいちゃは見てるだけよりまざったほうが楽しいって！」
「しないし、そもそも僕達の姿は誰でも見れるってわけじゃない！」

　遂にはツッコミに専念し始めた青い帽子の妖精。それからタルトから少年の良いところを本当にたっぷりと説明される事となった。
　確かに良いと思う面もあったのは事実だが、それでもこの人間ほどになるのはヤバい。そう思う妖精であった。

このページにイラストを設定する

妖精の三兄弟

シナリオ

シナリオデータ

シナリオスケジュール

参加キャラクター一覧