夢に舞う、緋い鳥｜リアクション

夢に舞う、緋い鳥

結：寂しいさよなら

　異世界から解き放たれた一同は、いつの間にか寝子島・シーサイドタウンに戻っていた。目を覚ました野々ののこは、鳥かごを抱えたまま眠そうに目を擦っていたが……やがて、慌てたように走ろうとした。
　彼女を引き留め、話を聞いた一同は、しばし鳥を探すも……、その鳥はついぞ見つからなかった。
「あとは頼んだぞ」と、どこからともなくテオの声がした。

　――夕方

「みんな、お疲れ様」
　サキリ・デイジーカッターの声に、集まった寝子高生たちはそれぞれ声を上げる。ここは寝子島のとある焼き鳥屋。サキリの提案で焼き鳥を食べようという事になったのだ。
　店に行った際既に何者かによって予約はされており、２時間食べ飲み放題になっていた（しかもその支払いは既に済まされていた）。
「……よく、食べられるわね」
　オレンジジュースを飲みながら、椎井莉鳥がぽつり、と呟く。彼女は疲労から食欲も落ちているらしい。一方、山田勘三郎はものすごくいい食べっぷりで焼き鳥を食べていた。
「はぁ……。勝利の味ぃ～」
「のどに詰まらせないようにな～」
　苦笑しながら志波武道が窘め、飲み物を注文する。無事に戻ってこれた事はうれしい。だから、この時を楽しもう、と明るく振る舞っているようだ。
「それにしても、神魂は相変わらずとんでもない騒動を引き起こす……」
　八神修はふう、とため息をつきながらののこを見て、１つ頷く。彼女には友達がいる。彼女の『フツウ』は守られたのだ。けれど……。
　雨崎楓香はそんな先輩たちの様子に目を細め……ちらり、と部屋の隅を見た。そこでは「鳥がいなくなってしまった」とすこし落ち込んだののこを、愛猫萌々子が励ましていた。
（あれが本当にただの赤い小鳥ならよかったのに……）
　ののこの友達を形式的に奪ってしまった事が後ろめたいのだ。それは恵御納夏朝も同じである。心配故、ののこの傍にいた。
「大丈夫？　泣くんだったら、胸は貸せるよ」
「うぅ……夏朝ちゃん、ありがとう」
　ののこはぼろぼろ涙を流し、夏朝に抱き着く。その様子を見ながら夢宮瑠奈は少し苦いものを覚えつつも、ちょっとほっとしていた。
（まだ、未来を信じてる。こない明日はない……そう思ってよかった）
　だから、今、友達とここにいる、と。瑠奈は優しくののこの頭を撫でた。
　そんな少女たちの姿を見ながら、恵御納久隆は静かに呟く。
「荒野も断崖も干上がった湖も……只の夢だ。断じて寝子島の姿などではない」
（私は、そう信じたい）
　窓の外を見つめ、ため息を吐く。妙にリアリティのあるあの世界が、なぜか胸の中の何かを掻きむしっていた。

（終）

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あとがき

担当マスター：菊華伴
ファンレターはマスターページから！

どうも、菊華です。
今回はののこの夢にやってきた鳥との戦いだったわけですがいかがだったでしょうか？
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
なお、この鳥にはモデルがいるのですが……お分かりになった方はいらっしゃらなかったご様子。
ちょっと嬉しい反面寂しい気持ちもあります、はい。

＞『拒絶』について
実は、鳥が分身した際啄まれて戦闘不能になるとそれだけで鳥の体力ががくっと落ちる仕組みでした。

＞湖の跡について
ある程度刺激したり掘ったりすると、水が湧き出る仕組みでした。そして、潤って砂が土に変わり、『夕焼け染め』が出来なくなる、という仕組みになっておりました。やはり湖の跡に関して予測する方いますよね……。

ののこちゃんは戻ってきましたが、彼女が好きだった鳥は神魂効果もなくなり消えました。
文句なしの『成功』です。

皆様には『謎の赤い羽根とバラのコサージュ』及び称号：赤い空の勝利者を差し上げます。

それではこの辺りで。
また縁がありましたらよろしくお願いします。
菊華　伴

※個別コメントも確認お願いします。
　なお怪我に関する「全治～日（週間）」に関してはニュアンス的なものとお取りください。

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