試作品「空中飛行シューズ」｜リアクション

試作品「空中飛行シューズ」

●空を飛ぶ楽しみを

　白真白は外を歩いていると、自称・発明家と名乗る男性に出会った。
　怪しさ満点でどうやって逃げようか考えていると、男性はなにかを差し出した。

「ぜひこれを履いてもらいたい！」

　そう言って男性が見せたのはごつごつした靴だった。

（え、なにこのメカメカしいシューズは……なんだかスキーのシューズに似てる？）

「これは履けば空を飛べるんだ！　素晴らしい！」

　男性は自分の試作品を自信満々に語る。
　そしてなかば押し付けられる形で、真白はその靴を受け取ってしまった。

（これを履けば飛べるって言ってたけど本当かなぁ？）

　受け取ったものの半信半疑、いや疑いのほうが強い。

（まぁ、物は試しだよね。さっそく履いてっと……）

　それでも何事にもポジティブに捉える真白はその靴を履くことにした。感触は硬く、普通に歩こうとすると進みにくい。

（それで、これはどうすれば飛べるんだろう？）

　靴のいろいろな部分を触ってみる。
　ゴツゴツした見た目のせいで、靴の構造がよく分からない。

（えーとここかな？　それともこっち？）

　ようやくスイッチらしき場所に触れた。
　すると靴底から何か力が放出されるのを感じる。

「……おぉ、浮かんだ！　うわっと、ちょっとバランス取りづらいかも」

　体を大きく開いて、空中でどうにか立とうとする。これならなんとか倒れずにすみそうだ。

「ちょっとコツがつかめたかも」

　真白は地面を蹴る要領で空中で足を動かし、前進後退、左右移動と簡単な動きなら慣れてきた。

「それにしても、これ、どうなってるんだろう？」

　靴を渡してきた男性は空を飛べることは熱く語っていたものの、性能に関する詳しい説明を一切しなかった。

（重力が打ち消されてる？　まぁ、詳しいことは分かんないけど楽しいからいっか）

　基本の動きは頭と体が覚えた。これならもっと色々なことができるはずだ。

「よーし、せっかくだから飛び回ってみよっと！」

　くるくるその場で回ったり、ふわっと浮きながら宙返り。
　また急上昇からの急降下を行い、ゲームで見た飛行機の空戦軌道を真似てみる。ゲームで味わう感覚とはやはり全然違って面白い。

（前にも神魂の影響で空を飛んだことは何度かあるけど、やっぱり自分の身一つで空を飛び回るのって楽しいね。全身で風を感じられるし）

「さーて、次は何をしようかな」

　真白は笑顔でそう言うと、強く空を蹴った。

このページにイラストを設定する