寝子小クリスマス会☆　悪魔ネズミの襲撃！｜リアクション

寝子小クリスマス会☆　悪魔ネズミの襲撃！

（ネズミぺしぺしするために、何かクリスマス会の雰囲気になじむ武器になりそうな物はないかなぁ……）
　舞台袖で出番を待ちつつ、トナカイＡ役の瑠樹は考えていました。
　悪魔ネズミがいたずらしていないか、怪しいところはないか見張るのも忘れません。
「チュッ」
　視界の隅でパタパタと悪魔ネズミが飛び、瑠樹はステージの様子に違和感を覚えました。
（あっ、電飾消えてる！　ああ、でももう出番だよぉ）
　最初にセリフがあるので勝手に動くわけにもいきません。
　瑠樹は他のトナカイたちと一緒にソリを引きながら舞台に出ていきます。
「きみのお鼻、いつも真っ赤だねえ」
　無事にセリフを済ませ一息ついた瑠樹は、さりげなく後ろに下がりました。
　劇が進む中、サンタの瀬莉が登場しました。
「ホッホッホッ、おや、ルドルフやどうしたんだい？」
　元気にセリフを言った瀬莉ですが、トナカイのルドルフ役の子が戸惑っています。
（しまった、トナカイのセリフが先だった！）
　セリフを飛ばしてしまい内心慌てる瀬莉。
　次のセリフを言う子がどうしていいか固まっている状態で、これはピンチです。
「……おっと、悲しそうな声が聞こえたと思ったが空耳だったかな？　わしとしたことがボケたかのお」
　が、クリスマス劇出演は三回目の瀬莉、そこは何とかノリと勢いでごまかします。
　てへべろっ。
　可愛く舌を出す瀬莉のオーバーな演技に、どっと笑い声が起こりました。
（これはこれでまあいいか）
　と思ったりします。
　ルドルフ役の子も気を取り直して芝居を続けました。

　そんなふうにみんながサンタに注目している隙を見逃さず、瑠樹は動きました。
（今のうちに）
　そっと電飾のスイッチを入れると、幸いかじられてはいなかったようで、無事にツリーの電飾が付きました。
（よかったぁ）
　しかし安心する間もなく。
「たおれちゃえチュー」
　ぐらり。
　大きなえんとつの書き割りが揺れました。
（おっと、あぶないよぉ……）
　倒れそうになるえんとつを、慌てて支える瑠樹。
　おかげで舞台は無事に進み、拍手喝采でした。

　どうにか劇が終わり、舞台を降りて瑠樹は気づきます。
（……そうだ、武器。トナカイの角とか？）
　引っ張ってみると、ぽろりと案外簡単にトナカイの角は外れたのでした。
「よーし、これでいけるよぉ」

「瀬莉ちゃん、よかったよー」
　仲良しのクラスメイト、カナちゃんが瀬莉に声をかけてくれました。
「ありがとう」
　クリスマス劇を終えても、ぼーっとしてはいられません。
「次はクラスの合唱だね」

このページにイラストを設定する