らっかみ！新春☆初夢宝船フェア２０２０！　～白編～｜リアクション

らっかみ！新春☆初夢宝船フェア２０２０！　～白編～

　電脳、という世界があることを知ったのはいつだったろう。
　星幽塔１階の「マルトンの店」に住み込むアイオ・キャンドライトである自分。
　寝子島と繋がってからは、寝子高生「喜矢武(きゃん) あいお」として高校に出入りしたり、猫鳴館に空き部屋に寝泊まりしたり、異世界ライフを楽しんでいる。
　そんな中で会ったもう一つの世界が、地球人がここ何十年かの間に発展させた電脳という世界。
　そこに入るのに肉体はいらない。
　０と１からなるデジタルのデータとなり、世界中を繋ぐネットワークの中を電気信号の連なりとして行き来して、遠い国の映像や音楽や情報を送り合うのは、とってもとっても刺激的だ。
　この電脳の世界では、寝子島に来ても消えない猫耳を露わにしても、誰も不思議に思わない。
　寝子島の風景やデジタルを交えた映像に自分の歌声を載せて動画配信するのにも随分慣れた。
　今日は宇宙を感じさせるエレクトロニック・ダンス・ミュージックをチョイス。
　投影させた自分のアバターは、曲調に合わせてどこか中華風味の衣装。衣装のレイヤー、透明度を示すアルファ値は０に寄せてスライド。ライティングはシアン。
　映像の中には安定状態の幾何学的な立体の連なりが並ぶ。
　約百三十億年ほど時間軸を遡ったころ。
　宇宙は無であったという。
　無であるとは何もなかったという説もあるが、すべてのものが全き安定状態であったという説もある。
　そしてたった一つ、何かが動いた。
　崩れる均衡。
　僅か10のマイナス43秒という単位の間に、変化し続ける世界の有様。
　円錐、円柱、角錐、角柱、四面体、六面体、それらを組み合わせたShapes。
　アイオのアバターは幾何学立体たちを押しのけながら空間を飛ぶ。

　僅かな動きは隣へ、隣へと連鎖し、ある一点を迎えると一気に爆発するように拡大していく。
　開闢。
　インフレーション。
　ミュージックシーケンサーが作り出した電子音のリズムの跳ねるのに合わせ、光の粒が小惑星のように動いて衝突し、弾けあう。
　気持ちのよい無重力感。
　星幽塔でも寝子島でも味わえない感覚。
　アイオの声は透き通り、空間を震わす波動となる。

　飛ぶの
　飛ぶの
　どこまでも

　ここに来て
　いっしょに飛びましょう

　怖がらないで　全てが変わる
　「あなた」と「私」で
　世界は変わる

　くるくる回るアクセスカウンター。
　いいね！
　Like!
　joh-ayo!
　Hao-a!
　J’aime!
　Me Gusta!
　Mi piace!

　歌は届く。
　電脳の蜘蛛の巣を伝って、世界中へ。
　再生される。
　０と１が映像に。

『怖がらないで』
　――それは自分自身への言葉。
　大丈夫。怖くない。どこまででも飛べる。この身は軽い。

『全てが変わる』
　――そう、変わった。
　星幽塔にいたときには想像もしなかった世界と出会えた。
　自分の歌を、見たことも会ったこともない人が聞いて、好きになって、感動してくれる。
　そんなことが起きるなんて、かつては想像もできなかった。
　
『「あなた」と「私」で』
　――このクリエイティブは、画面の向こうにいる『あなた』と『私』の共同作業。
　ひとりじゃない。
　だから歌える。

『世界は変わる』
　――私の世界が変わっただけじゃなく、私の歌であなたの世界も。
　私が動くことで、誰かの未来も。
　そうして隣同士干渉しあってゆくことで、世界も。
　変わっていくのだ。
　思いもよらなかった方向へ。
　想像もできなかった未来へ。
　

　この世界では、どんなミラクルも叶ってしまうのだ。

『飛ぶの
　飛ぶの
　どこまでも

　ここに来て
　いっしょに飛びましょう』

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