いきなり夜間警備！？　無事に連勤できるかな｜リアクション

いきなり夜間警備！？　無事に連勤できるかな

◆冷静沈着リケジョな彼女

「暑い……！」

　いきなり警備室に閉じ込められて七日目。うだるような暑さの中、マリエッタ・ラシュリエは今日も壁に掌を当てて瞼を閉じる。すると瞼の裏に建物の内部構造が見取り図として写し出された。彼女のろっこん『アーキテクト・アナリシス』の力である。

「これならここをこうして、こうすれば……いけるかも」

　その能力を駆使し、彼女はぬいぐるみの動きを的確に読んで進行を妨げる。慣れた作業。七日目にもなるとぬいぐるみも活発になっていく。こんな調子で耐えなきゃいけないとは何とも割に合わない気もするが、どうもそうしないとこの異空間から出られることもない、と思ったマリエッタはバッテリーの残量を見た。

「これは温存した方が良いわね」

　続いて時計を確認する。3:54を示しているそれはゆっくりと動いて彼女を煽る。しかし焦ることは無く冷静に対処していく。これまでも警備室に侵入されずやり過ごしていたが、それでマリエッタは慢心しない。彼女はテーブルの上の扇風機を一瞥し、

「これ、使えそう」

　と呟いた。そうこうしているうちにとてててて……という足音が響く。

「まずい！」

　シャッターを下ろしても間に合わない。マリエッタは咄嗟に扇風機を押し付けた。その勢いに緩んだカバーが外れ、ぐるぐると回る羽がぬいぐるみの顔面を削っていく。突然の反撃に逃げたぬいぐるみのせいで、彼女の重心が傾いた。

「きゃっ！」

　硬い床に倒れこんだマリエッタは、天井を見上げながらぬいぐるみの足音を聞く。

「これはもうだめね……」

　無防備な状態で死を覚悟したその瞬間、時計が6:00を示すと部屋に黒服がぞろぞろと入ってきた。戸惑うマリエッタは『おめでとうございます』というカンペを見せられた後彼らに抱えられる。神輿や胴上げのような雰囲気の中で彼女は賞金のことを考えるのだった――。

『完璧な対策でした。おめでとうございます！　マリエッタさんには賞金を差し上げます！　次の方も頑張ってください！』

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