いきなり夜間警備！？　無事に連勤できるかな｜リアクション

いきなり夜間警備！？　無事に連勤できるかな

◆地獄のバイト！　奮闘ＤＫ！

「覚えがないぞ……９０ポンドってなんだよ！　円でいくらだよ？」
『現在のレートでだいたい１３０００円でーす』
「やっす！」

　陽気な説明を聞いた響蒼留人の叫びに、今度は少女の声が応える。少女は電話越しにくすくすと笑ってこう続けた。

『まあまあ、設定上のものですから安心してください！　でもでも、その９０ポンドも生還しないと貰えませんよ？』
「……って生還しないと給料もらえないのかよ！　そんなに危険なのか？」
『はい、とーっても危険です』
「責任者出てこい！」

　蒼留人のもっともな叫びにも少女は笑うだけである。ガチャンという無慈悲な音とともに電話は切れ、静寂が訪れた。

「ったく……」

　無茶だろうとか予備バッテリーはないのかだとかいろいろと思うことはあるが、それをぶつけるのも生還してからだ。蒼留人はモニターを覗き込む。時刻は0:38。扇風機の風に当たりながらなんとはなしに廊下を見た。

「うおっ！？　危なっ！」

　可愛らしい白ウサギがライトに照らされてぼんやりと佇んでいる。蒼留人は咄嗟にシャッターを閉めた。侵入しかけていたそれはシャッターと床に挟まれてぎちぎちと音を立てているが、なかなか壊れそうにない。彼はその頭を蹴り飛ばし、無理やり部屋の外へ出した。

「なんなんだよ……」

　物音が聞こえなくなったことに気付き、蒼留人はモニターを確認してシャッターを上げる。困惑している暇はないようだった。蒼留人はぬいぐるみの動きに注意しながら罠にできるものがないか探す。しかし警備室の中にそういったものはなかった。そうしているうちにどこからか、とてとてとて……という可愛らしい足音がしてネコのぬいぐるみが入ってくる。

「このネコ！　どっから来た！」

　彼は持参した竹刀をぬいぐるみの頭に振るい、薙ぎ払う。ぬいぐるみは反撃しようとするが、その瞬間、部屋に黒服の男たちが入ってきて蒼留人を担ぎ上げる。そのうちの一人が抱えたカンペには『休憩の後、二日目に移行します。おやすみなさい』と書かれていた。

「昼の間は入れないのか？」

　黒服は無言で首を振って手でバツ印を作る。蒼留人は何か言い返そうとしたが、急な眠気に倒れた。

「またかよ！」

　そして翌日、見慣れない部屋で目覚めた蒼留人はこう叫ぶ。そういった流れを繰り返してもう四日経った。

「よし今日もどうにか……」

　蒼留人は警備室のシャッターを締め切り、強行突破してきたぬいぐるみを対処する。今回も順調だと思ったが――。イヌのフレッドに一閃、その時ばきり、と竹刀が折れた。突然のことに驚く蒼留人だったが、俄かにドタドタドタという足音がして、ふっと部屋の電気が消えた。

「なんでだよ！！　あとちょっとだったのに！」

　ぐちゃっ、ごりっ……。部屋には肉を裂く音と少年の呻き声が響いた。
　それからどれほどの時が経っただろう。静まり返った部屋にジリリリリ……という音の後に少女の声が続く。

『惜しいところまで行ったんですが……常時閉めているとバッテリーを消耗しやすいんですよねー。残念でした！　またの挑戦をお待ちしてまーす』

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