いきなり夜間警備！？　無事に連勤できるかな｜リアクション

いきなり夜間警備！？　無事に連勤できるかな

◆美少女ゲーマー、殺人ウサギに挑む

　深夜の自宅――オンラインゲームに興じていた仙藤蒼は、かくりかくりと転寝をした。はずだった。はっと顔を上げた彼女の前には見慣れない景色が広がっていた。自分の部屋とは違う殺風景な部屋に彼女は、

　――自分の部屋じゃない……いったいここはどこなんだろ？

　と考える。そしてそのままじっとりとした熱気に顔を顰めていると、ジリリリリ……と電話が鳴りだした。蒼は震える手でそれを取ると、受話器から聞こえる陽気な男の声に耳を傾けた。

「そういうこと……」

　説明を素早く頭に叩き込むと、彼女は部屋を見回して隠れ場所を探す。ぬいぐるみが侵入した場合のためだ。可能性は低いが、運が良ければやり過ごせるかもしれない。そうしていると陽気な声が途切れ、部屋には扇風機の回る音だけが響いた。

「さてと、頑張りましょ」

　蒼は自分を鼓舞してモニターを覗き込む。動き回るというぬいぐるみは部屋に座ったまま微動だにしない。画面の隅にある時計を見ればそこには0:12と記されている。

　――夜間ってことはたぶん、朝までだよね。

　そう判断した彼女は、朝を待ちながらモニターを操作した。

『ハロー！　なかなかやるじゃないか！　気を抜くなよ』
「五日目にもなると慣れてくるね」

　と独り言ちると、蒼は受話器から聞こえる声に耳を傾けた。辞職を考えているという男の声の他に、何か聞こえるような気がする。鳴き声だろうか？　低くくぐもった声がした。

「怖い……」

　とはいえすることは前日と同じだ。モニターを確認し、ぬいぐるみがの動きを読んでシャッターを下ろす。とくにクマのボブの動きを注意して確認する。というのも、昨晩の警備中、居なくなったと思った次の瞬間一気に近づかれたから、慌ててシャッターを下ろしたのだった。ゲームで鍛えた反射神経がなければ死んでいたかもしれない。

　――まあ、どうしてもやむを得ないなら壊すけど……。

　けど、本当にやむを得ない時以外はやめた方が良いと彼女の勘が告げている。そうこうしているうちに、ボブが動き出したのが見えた。彼女がシャッターを下ろすと獣の咆哮とシャッターをガリガリと引っ掻く音が響く。それに伴ってバッテリーもめりめりと減っていく。不安はあるがおそらく……大丈夫だ！　そう蒼が考えた5:30。
　突如バツン！　と音を立てて部屋の電気が消え、下ろしていたシャッターが一斉に上がった。

　――嘘でしょ！？

　蒼は急いで机の下に避難し息を潜める。複数の足音が通り過ぎてほっとしたその瞬間、どこからか低くくぐもった声と――クラシックだろうか。なにかの曲が鳴って、額に激痛が走った。メリメリと食い込む爪が彼女の頭を割り開いて――。

「いやっ！！　……ぁ、はっ……ゆ、夢？」

　そこで蒼は目が覚めた。あたりを見まわすとそこはあの警備室ではなく見慣れた自室だった。蒼は布団に潜りこんで先程の悪夢を忘れようと試みる。

「……。寝直そう……」

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