【期末テスト】赤点？満点？？寒風、四日間の死線＜物語編＞｜リアクション

【期末テスト】赤点？満点？？寒風、四日間の死線＜物語編＞

「桜花寮食堂で勉強会があるんだって」
　そんな話が聞こえてきて、恵御納夏朝は思いました。
（２学期の期末テスト、夏夜ちゃんと並んで受けたかったけど……）
　夏朝の中には、【夏夜】（かや）という別人格の少女がいます。
　体は一つしかないので、夏朝の意識があるときは夏夜は出てこれないのです。
　それから夏朝は、犬杜初のことを思い出しました。
（初ちゃんを誘って一緒に勉強したい）
　初はちょっと変わった縁のあった友達で、転入生である彼女を夏朝はいろいろ心配していました。

「勉強会ー？」
「希望あれば別の場所でもいいんだけど……どうかな？」
　勉強と聞いた初は微妙な表情になりましたが。
「場所は別に、どうでもいいけど……学校から近いよね、それでいいよ」
　観念したようにＯＫしてくれたのでした。
　
　そんなわけで、二人は桜花寮の食堂にやってきました。
「僕でわかることなら教えるよ、何の科目がいい？」
　夏朝の問いに初からは、
「……じゃあ、数学」
　という返事が返ってきて、それを重点的に教えることになりました。
　しかし。
「あー、覚えられないー」
　初が音を上げました。
「うーん、僕個人は猫さんに絡めて覚える方法使ってるけど、ノートが猫さんだらけになるんだよね……」
「ほんとだ」
　ノートを覗き込んだ初が頷きました。
「何か初ちゃんが覚えやすそうな方法が見つかるといいね。とりあえず、根を詰めずに気分転換してみようか。そうだ、よかったら初ちゃんにも勉強教われたら嬉しいな」
「……ういは勉強嫌いだから教えられないよ」
「気が向いたらでいいんだ。そうだ、飲み物買ってくるね」
　暖かめの飲物を二人分用意して、飲み始めました。
「うーん、でも眠くなってきた」
　頑張って勉強を続けようとした夏朝ですが、あくびが抑えられなくなりました。
「ふぁぁぁ……１０分位仮眠とろうか……」
　睡魔の誘惑に負けて少し寝ることにしました。
「ＺＺＺＺ……」

（はっ？　仮眠のはずがぐっすり寝てしまった）
　慌てて起きたら……何かが違っていました。
（やぁ、別人格の【夏夜（かや）】だよ……とか言えるかー！　と言うか夏朝、仮眠でうっかり僕を表に出すんじゃない！）
　そう、目覚めたのは夏朝ではなく、夏夜だったのです。
「起きた？」
「あ、おはよう……初、ちゃん」
　初に夏夜のまま反応しそうになり、慌てて口調を整えました。
（犬守の２人とは、１回絵の中で会ってるけれど、現実ではまだ僕の事打ち明けてなかったはずだ……）
　勉強中に混乱させるのも良くないだろうし、勉強会を終え、初が無事に帰るまで夏朝のふりをして接しようと思うのでした。
　しかし、演技以外の問題がありました。
（再度の仮眠で夏朝を出したくはある。僕が出てる間の事、夏朝は思い出せないから、夏朝の勉強時間が……！）
「どうかした？」
「ううん、なんでもない。どこまで進んだっけ？」　
　うまくごまかせました。
　そして初が帰るまで勉強を続けた夏夜は、無事見送った後再び仮眠に入るのでした。

（皆いい点とれますように。夏夜ちゃんと一緒に受けれる日もきますように……）
　どうやら、無事夏朝に交代できたようです。

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