【期末テスト】赤点？満点？？寒風、四日間の死線＜物語編＞｜リアクション

【期末テスト】赤点？満点？？寒風、四日間の死線＜物語編＞

〇打ち上げ？

「あれ……テスト、終わってる……」
　１年生の穂現まうは、きょろきょろとあたりを見回しました。
（寒すぎて……体育のテストの途中に、寝ちゃった……調子悪いと、あんまり解けない……）
　テストの成績は調子良い時と悪い時の落差が激しいまうです。
　教室内は帰り支度をする生徒たちでにぎわっていました。
「終わったー！　打ち上げ行こうよー」
　誰かのそんな声も聞こえていましたが、まうはぼんやりと窓の外を見ました。
「猛吹雪は終わった、かな」
　さっきまですごい吹雪だったのが嘘のような青空でした。
　口数少なく、人見知りなまうは、クラスメイトと話したりすることもなく支度をして寝子高を出ました。
（猫を探したい。猫鳴館の中でも外でも構わないからとにかく、猫と触れ合いたい……）
　普段からのんびり気分屋で、興味ない部分の勉強も、我慢や忍耐も苦手なまう。
　テスト漬けの四日間を過ごして、すっかり疲れていたのです。

（さっき打ち上げ？　とかの話も聞こえたような、そうでないような……）
「まうの打ち上げは……猫と一緒、がいい」
　まうは猫が相好きです。
（猫鳴館でぬくぬくごろごろ、もいいけど、テストの打ち上げは沢山の猫とぬくぬくごろごろ、がいいな……）
　そう思いながら、一度猫鳴館に戻り、準備をすることにしました。
　幸い雪は溶けていましたが、地面はあちこち濡れています。

（地面が濡れてそうだからビニールシートと小さい毛布を鞄に詰めて）
　準備を済ませ、まうはまずシーサイドタウンに向かいました。　
　猫が沢山いる所を探して。

　旧市街、九夜山も巡ります。
「いた……猫！」
　瞳を輝かせ、まうは猫たちにに話しかけました。
「……今日は寒くなかった？　大丈夫？　風邪、ひいてない……？」
　言葉はわかりませんが、優しく語り掛けます。
「ニャー」
　猫たちはどうやら元気そうでした。
　まうは湿った草の上にビニールシートを広げ、毛布を敷きました。
　そして、ごろん、とシートの上に横たわり、丸くなります。
　それを見て、猫たちも寄ってきました。
「毛布はまうが使いたい……けど、猫さんに貸してもいいよ」
　今日は猛吹雪で寒かったから、その分、猫がぬくぬくするといい、と思います。
　猫たちも毛布の上にごろんと横になり。
　その体温だけで、十分ぬくぬくと温かいのでした。
「気持ちいい……」

　程よく一緒に寝たところで、まうは立ち上がりました。
「ずっとこうしていたいけど、日が陰ってきちゃったね」
　猫が動き出したのを潮に、シートをしまいます。
　けれど猫は、毛布に顔を摺り寄せてきました。
「毛布……いる？　……なら、あげる」
　毛布も猫も濡れないよう、雨や雪が吹き込まない木陰を探すと、幸い樹のうろがありました。
「猫と毛布が一緒にぬくぬく……できるといいな」
　そこに毛布を入れながら、まうはつぶやくのでした。

　まうは愛しい猫鳴館に帰ります。
（テストの事……一週間後まで忘れて、寝たい……）