１１月の☆ハッピーバースデー｜リアクション

１１月の☆ハッピーバースデー

●寝子島神社とお三夜さま

　恵御納夏朝はお三夜さまの誕生日を祝おうと、寝子島神社へ向かっていた。鞄のなかには彼女に似合いそうなリボンやマフラーが入っている。

（誕生日の前に会えたなら、食べ物の好みとか聞きたかったな……）

　そうしたらショートケーキやクッキー、好きなものを作るか買うかできたのに。
　もし魚のほうが好みなら、おいしい魚料理を用意することもできたけれど、残念ながらそれは叶わなかった。

　桜花寮を出て、寝子島街道を通り旧市街へ。人々をすり抜けるように歩き、参道商店街を過ぎる。
　そうしてたどり着いた目的地。少し肌寒いなか、鳥居が出迎えてくれた。それをくぐり、正面の建物に近づく。

（お三夜さまは……いないか）

　夏朝は小さくため息をついた。
　存在が存在なので、これも仕方ないことだろう。せめてプレゼントだけでもと思い、持ってきたリボンなどをそっと納める。

「お三夜さま……お誕生日、おめでとうございます！」

　夏朝はプレゼントを入れた包み箱がお三夜さまに届くことを願う。
　できれば狛猫たちにもマフラーなどをプレゼントできたらよかったのに、と肩を落とす。

（夢のなかでも、また会えるといいな）

　用意したプレゼントを眺めながら、そっと目を閉じる。

（お三夜さま、最近の調子とかはどうかな？　日常の事とか、狛猫さん達の事とかも聞いてみたかったな）

（僕の方は色々変化があるけれど……叶えたい願いもあるから、日々頑張ってる所だよ）

　見えないけれどきっと届く。そう思いながら、心の声を呟く。
　目を開くと、そこには変わらずプレゼントが置かれていた。夏朝は建物のほうに一礼して鳥居へと向かう。
　鳥居をくぐりながら、夏朝はお三夜祭りのことを思い出す。

「今年のお三夜祭りも楽しみ……」

　去年はとある鳥関連のどたばたもあって、なかなか大変だった。
　しかし、そのこともあってお三夜さまに出会えて、充実したお祭りだった。

（悪いものの介入もなく、平穏無事に楽しいお三夜祭りが行われますように）

（お三夜さまも狛猫さん達も楽しめるお三夜祭りになりますように）

　夏朝は、そっと心の中で願った。
　そのとき、神社の奥から風が吹いた。それがお三夜さまと関係があるかは分からない。
　けれど、返事をもらったようで夏朝は嬉しかった。

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